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休眠特許と開放特許 ~その活用について~

“休眠特許、まちの店に貸します 森永製菓→和菓子店、大福ヒット
 森永製菓が持っている休眠特許を川崎市の老舗和菓子店に貸し出し、新しい商品が生まれた。「大企業」の特許を生かして「まちの店」がヒットを飛ばし「社会」にも貢献――「一粒で三度おいしい」を実現できた裏にあった「幸運」とは?
(中略)
 きっかけは2016年春。特許に関わる社内会議が森永で開かれた。保有する特許の半分近くが使われていない「休眠特許」だとの報告を聞いた幹部が「使っていないならほかに使わせたらどうか」と発言した記録が残る。
(中略)
 休眠特許といえど、何でもかんでも貸し出せるわけではない。例えば、自社商品と類似商品を作らせない「防衛目的」で、周辺技術の特許を取っておくケースもある。貸し出せる特許と貸出先のニーズが合うのか。桜田さんはそれを確かめようと、かつての名刺ホルダーを引っ張り出し、中小企業を支援する自治体関係機関に連絡を取った。
 その一つが川崎市産業振興財団だった。財団側の返事は早かった。「ただし、もうかりませんよ。CSR(企業の社会的責任)としてやった方がいいのでは」
 食品業の場合、ライセンス料は一般に売り上げの2~3%ほどと言われている。中小企業に貸したところで、年間数十万円がやっと。それなら最初からもうけを考えない方がいいという考えに、桜田さんは納得。森永が特許のライセンス料は取らず、代わりに末広庵が販売1個当たり1円を「音楽のまち・かわさき推進協議会」に寄付してもらうことにした。(後略)
2019年12月3日05時00分朝日新聞DIGITAL

1.休眠特許について
 休眠特許とは、特許出願が特許査定され、特許料が支払われて登録されているのに、その特許に係る発明が特許権者による製造販売などの実施や、ライセンスによる実施行為が行われていない特許のことをいいます。
 特許は特許査定されれば直ちに登録されるのではなく、特許料を支払うことによって登録され存続します。
 すなわち、登録を維持するための維持費が発生しています。
一説には、登録されている特許の約半分は休眠特許であるとも言われています。

 ただし、休眠特許となっているものの中にも、自社に当面実施の予定がなくとも、他社に権利化されてしまうことによる不利益を避けるために出願されたものなど、維持費をかける意味があるものもありますが、特許製品の売れ行き見込みが自社のマーケットの規模に合わなかったり、発明したものの自社のノウハウでは製造しきれなかったり、などの理由で、休眠しているものも多いようです。

2.開放特許について
 開放特許とは、特許権利者が自社で実施できないため、他者に実施してもらった方が良いと考え、その情報を一般に開放している特許のことをいいます。
開放しているからといって権利を放棄しているわけではありません。
 したがって、開放特許を利用したい場合は特許権利者と交渉し、実施許諾や譲渡の契約を結ぶことが必要となります。
 ライセンス料や譲渡対価が発生すれば権利者は収益を見込むことが出来ます。
 ただ、上記記事のように、特許権者は収益を得ない形もあります。
 有名なところでは、株式会社デンソーウェーブ(株式会社デンソーの子会社)のQRコードに関する特許があります。
 これは、仕様をオープンにして、誰でも自由に使えるようにして、当時同社が開発していたバーコードの読み取り機(スキャナー)で利益を出そうと考え、技術をオープンソース化して、QRコードをより広く普及させようとしたとのことです。

3.解放特許情報データベース
 INPIT(独立行政法人工業所有権情報・研修館)のサイトには、解放特許情報データベース(https://plidb.inpit.go.jp/ordinary/top)があります。
 自社商品開発に行き詰まったり、新分野への進出を考えたとき、参考にしてみてはいかがでしょうか。
 中小企業が大企業の開放特許を利用しているうちに、新たな改良発明ができて、それを逆に大企業にライセンスして収益を上げることもできるかもしれません。