よくあるご質問
知的財産Q&A
知的財産権の基礎から、実務上の様々な問題まで、ご説明いたします。
特許、実用新案、意匠、商標だけでなく、著作権、不正競争、肖像権、パブリシティ権など、各種の法律やノウハウの実務的な活用についても、分かりやすくご説明いたします。
産業財産権とは
特許・実用新案・意匠・商標は、それぞれどのようなものですか?
A. 特許と実用新案は、新しい技術を対象とします。
特許は、「物」と「方法」のどちらも保護しますが、実用新案の対象は、「物品の形状、構造又は組合せ」のみです。
特許は出願後、審査請求を行って、審査で認められなければ、特許を受けることができません。権利の存続期間は、出願後最長20年です。
実用新案は、出願すれば登録され、権利の存続期間は、出願後最長10年です。
意匠は、物品の外観デザインを保護します。
出願すれば審査され、登録を認められれば、権利の存続期間は登録後最長20年です。
商標は、商品やサービスの提供に伴って使用される「マーク」を保護します。
出願すれば審査され、登録を認められれば、まず10年の存続期間が認められます。登録料を納付すれば更新でき、何回でも存続期間を延長することが可能です。
発明をしたときは
今までにない技術を開発しましたが、まず何をすればよいでしょうか?
A. その技術が、本当に今までにないものかを確認するために、先行技術調査をする必要があります。
製品化されていなくても、特許等の出願がされている場合があります。
既存の技術と比較して、単に同一のものがないかどうか、だけでなく、既存の技術よりも一定レベル以上進歩したものであるかどうかも、確認しておくべきです。
また、もし同一の技術について他人の特許権が存在していれば、自分で開発した技術でも、それを使用すると他人の特許権の侵害となる場合があります。
また、その技術が、公開すれば同業者が模倣できるものか、そうでないかも、別途検討するべきです。
それによって、技術をどのように保護すればよいかを検討しなければなりません。
新製品について押さえるべき権利
新たに開発した製品について、権利を取りたいのですが、どの権利を取得すればよいでしょうか?
A. 製品に用いられた技術が、今までにない新しいものであるか、既存の技術よりもかなり進歩したものである場合、特許か実用新案を検討することになります。
審査によって権利化にある程度時間がかかっても、長期の権利を取得したい場合は、特許を選ぶとよいでしょう。
早期に市場に出したい場合、すぐに権利化できる実用新案も考慮すべきです。実用新案として登録されていても、出願から3年以内なら、その登録を基礎として、特許出願をすることもできます(実用新案権は放棄します)。
技術的な特徴より斬新なデザインが売り物であれば、意匠を選択するとよいでしょう。
なお、新製品のネーミングについては、商標の調査・検討を忘れてはいけません。
ロゴデザインの権利
ロゴデザインを思いつきましたが商標と意匠のどちらの権利を取得すればよいでしょうか?
A. そのロゴが、商品やサービスを提供する際の、商品本体やパッケージ、あるいは店舗の看板などに使用されるのであれば、登録商標を取得するべきです。
衣料品やバッグなどに、模様として大きく装飾的に使用されるのであれば、意匠を考慮する方がよい場合があります。
権利の保護期間
特許・実用新案・意匠・商標は永久に保護されるのでしょうか?
A. 特許権の最長保護期間は、出願から20年です。審査が終了して特許査定され、特許料を納付してから登録されますので、それまでは保護を受けていない状態です。
実用新案権の最長保護期間は、出願から10年です。
意匠権の最長保護期間は、登録から20年です。
特許・実用新案・意匠の場合、権利を維持するために、年単位で登録料を納付しなければなりません。納付しなければ、権利は消滅します。
商標権は、10年単位で登録料を納付しますが、何度でも更新が可能です。また、やや割高になりますが、5年ごとに分割納付することもできます。
登録料を納付しなければ、権利は消滅します。
権利の消滅
登録料を納付していれば、権利が消滅することはありませんか?
A. 「審査」は人間が行うことですので、必ずしも完璧に行われるとは限りません。
実用新案権の最長保護期間は、出願から10年です。
そこで、不登録事由を有するのに誤って登録された場合には、権利の消滅を請求する制度があります。
特許と商標には、「意義申立て」制度があります。
特許公報・登録公報が発行されから一定の期間内に、本来なら特許・登録されないものが誤って特許・登録されたので改めて審理(審査のやり直しのような形)するよう申し立てるものです。
申立てが認められれば、権利は消滅します。
特許・実用新案・意匠・商標のすべてに「無効審判」制度があります。
やはり、審査で見落とされたとする不登録事由を提示して請求されますが、請求人と被請求人との間の、当事者対立構造(民事裁判のような形)で審理を行います。
請求が認められれば、権利は消滅します。
「異議申立て」や「審判」の結果に不服があれば、裁判で争うことなどもできます。
模倣品対策(特許)
特許権を持っていますが、模倣品が販売されています。どうしたらよいでしょうか?
A. 前提として、自己の特許権の存続を確認します。維持年金の未納、存続期間満了などで消滅していないかどうかを確認しなければなりません。
それから、模倣品に使用されている技術を分析し、自己の特許の技術的構成要件をすべて備えている(=特許権の侵害が成立している)かどうかを調べます。
特許権の侵害が成立していると判断した場合、権利の存在を確認した上で、模倣品の製造販売等の中止、その製造販売によって生じた損害賠償などを請求します。
事前に内容証明郵便などで、警告を行うことも多いです。
模倣品対策(実用新案)
実用新案権を持っていますが、模倣品が販売されています。どうしたらよいでしょうか?
A. 前提として、自己の実用新案権の存続を確認します。維持年金の未納、存続期間満了などで消滅していないかどうかを確認しなければなりません。
それから、実用新案技術評価を特許庁長官に請求します。
肯定的な評価が得られた場合には、特許と同様の権利行使を行います。
評価が肯定的でない場合、権利行使した結果として、逆に損害賠償を請求されたり、実用新案登録無効審判を請求されたりする場合があるので、注意が必要です。
模倣品対策(意匠)
意匠権を持っていますが、模倣品が販売されています。どうしたらよいでしょうか?
A. 前提として、自己の意匠権の存続を確認します。維持年金の未納、存続期間満了などで消滅していないかどうかを確認しなければなりません。
それから、模倣品の物品及び外観デザインと、登録意匠を比較し、類否判断をします。
意匠に係る物品及び、登録意匠のデザインの要部がそれぞれ類似し、共通の美感をもたらすと判断した場合は、特許と同様の権利行使を行います。
模倣対策(商標)
商標権を持っていますが、類似のマークをつけた商品が販売されています。どうしたらよいでしょうか?
A. 前提として、自己の商標権の存続を確認します。登録料の不納、存続期間満了などで消滅していないかどうかを確認しなければなりません。
それから、そのマークのついた商品が、登録商標の指定商品と類似しているかどうかを判断します。
そして、商品の出所の混同が生じる程度にその類似のマークと登録商標が類似しているかどうかを判断します。
両方とも類似していると判断した場合には、特許と同様の権利行使を行います。
模倣品対策(キャラクター商品)
意匠登録などは行っていませんが、自分で創作したキャラクター商品の模倣品が販売されています。
どうしたらよいでしょうか?
A. 著作権は、特許権などのように登録によって発生するのではなく、創作が行われたときに発生します。
まず、自分のキャラクターの創作時期を証明できるかどうかを検討します。模倣品の製造販売前に、著作権が発生していたことを証明する必要があるからです。
著作権の侵害には、依拠性、類似性の2要件が必要です。
どんなにそっくりだとしても、元の著作物を相手が知らなければ、元の著作物に「依拠」する(模倣する)ことは不可能です。
ただし、類似の程度を判断して、元の著作物を知っているからこそここまで類似している、と判断されることも多いです。
また、元の著作物が非常に有名であれば、同業者が知らないことは不自然である、と判断されることも多いです。
依拠性、類似性ともに満たすと判断した場合は、ほぼ特許と同じような権利行使を行います。
模倣対策(屋号)
100年以上続き、かなり知名度の高い屋号で商売をしていますが、商標登録はしていません。他人が自分の屋号と
似たようなマークで商売を始めたのですが、どうしたらよいでしょうか?
A. まず、自分の屋号の知名度を確認します。
「全国的」な知名度までは必要なく、「一地方」で周知な程度の知名度以上がある場合は、自分の営業と混同が生じていれば、不正競争防止法に基づき、マークの使用中止や、その使用によって生じた損害の賠償を請求することができます。
「全国的」に著名であるならば、「混同」が生じていなくても、不正競争防止法に基づく請求を行うことができます。
侵害警告(商標・先使用権)
ある日突然商標権侵害の警告を受けました。調べてみると相手方が商標権を取得したのは最近で、自分が
20年間使用してきた屋号とそっくりです。どうしたらよいでしょうか?
A. まず、その登録商標と自分の屋号の類否、そして、その指定商品(役務)と自分の商売の商品(サービス)の類否を判断します。
どちらかが非類似であれば、その旨で反論します。
両方類似である場合、自分の商標の先使用権の存在を確認します。商標法上の先使用権は、単に相手の登録商標の出願の際に自分の屋号を使用していただけではなく、その時点で一定レベルの周知性を獲得していなければなりません。
全国レベルまでは必要ありませんが、隣接市町村を越える都道府県レベル程度は必要です。先使用権を獲得していると判断した場合は、その旨で反論します。
その登録商標の出願時に自分の屋号が全国レベルの周知性を獲得していたのであれば、商標登録無効審判を請求し、相手の商標権を消滅させることも考慮します。
先使用権を獲得したと判断できなければ、残念ながら、屋号は使用中止、場合によっては損害の賠償を行わなければならなくなります。
商号と商標
会社設立の際に商号登記を行っています。会社名の使用については安心してよいですね。
A. 商号は、同一住所で同一商号でなければ、登記されます。したがって、他人の商標権の類似範囲に入っていても、登記されます。
自社の正式名称を「普通に用いられる方法」で使用している限りにおいては、他人の商標権の類似範囲に入っていても、権利行使の対象とはなりません。
しかし、著名ではない略称やデザイン性の高いロゴマークなどの形で使用すると、商標権の侵害となる可能性があります。
会社設立の際や、新商品・新サービスのリリースの前のネーミングにおいては、あらかじめ商標調査を行い、登録可能なものは出願を行うことをお勧めします。
使用すると侵害の可能性がある場合は、名称変更の必要が生じますので、決定前に検討を行うべきです。
侵害警告対策
他人の知的財産権を侵害している、との警告を受けました。どうすればよいでしょうか?
A. まず、警告の根拠となる権利の存在を確認します。警告者が正当権利者かどうかも、併せて確認します。
権利の存在が確認できたら、自己の行為が、警告者の権利の範囲内であるかどうかを検討します。
警告者の権利の範囲内であると判断した場合、その権利に無効理由がないか、自己に先使用権等の権利があるかどうかを確認します。
警告者の権利の範囲内でない、無効理由がある、自己の権利がある等の場合、その旨を回答します。
警告者の権利の範囲内であり、無効理由も、自己の権利もない場合、警告された行為を中止し、ライセンス許諾等の交渉を提案します。
新製品公開後の権利取得
新製品を展示会で発表してしまいました。もう特許権や意匠権を取ることができないのでしょうか?
A. 発表日から6カ月以内であれば、発表日やその内容などを証明する書類を添付して出願することで、特許、実用新案、意匠の登録を受けることができる可能性があります。また、技術内容等の不本意な流出による場合でも、登録を受けることができる場合があります。
技術のオープン/クローズ戦略
新しい技術を開発したら、すべて特許出願した方がよいでしょうか?
A. 特許出願を行うと、出願から1年6カ月後に、出願の内容が公開されます。このことを踏まえて考える必要があります。
その技術を備えた製品を発売した後、同業他社がその製品を購入して分析することで、技術内容を理解されてしまう(=リバースエンジニアリングが可能な)場合には、模倣防止のために、特許出願しておく方がよいでしょう。
特許権のない新技術が公開されれば、誰でも実施することができる、いわば「公共財産」となりますので、そうならないためには、特許権で保護する必要があります。
一方、製品を分解しても製造工程が不明で、摸倣が困難な技術などは、公開による模倣を考慮する必要があります。
このような技術は、出願書類レベルの技術文書に残し、営業秘密として秘匿するとともに、場合によっては先使用権証明のための証拠、万が一流出があった場合の証拠とすることが重要です。
他社の技術水準が追い付いてきた時点で出願するという戦略にも、利用することができます。
外国特許
新製品を海外でも販売したいのですが、外国で特許を取るにはどうすればよいでしょうか?
A. まず、どの国で特許を取得するのかを検討します。特許権は各国ごとに登録されるものだからです。
権利を取得したい国が、特許協力条約(PCT)の加盟国であれば、一括で出願することができます。日本への出願を基礎として、優先権を主張して国際出願することも、最初から国際出願とすることもできます。
PCTの加盟国でない場合には、当該国に直接出願することになります。
日本への出願を基礎として、パリ条約の優先権を主張して出願することが一般的ですが、日本で保護が必要なければ、当該国のみへの出願もできます。
製品を販売しようとする国だけでなく、模倣品を生産するおそれのある国への出願も、考慮するべきです。
優先権の主張できる期間は、最初の出願から1年です。
世界特許?
「世界特許」を取れば、世界中で権利を主張することができるのでしょうか?
A. ときどき「世界特許」という言葉を見聞きすることがありますが、世界共通の特許というものは存在しません。
PCT出願した場合であっても、ある加盟国で登録されたからといって、全加盟国で自動的に登録を受けることができるわけではありません。
どの国で特許権を行使したのかを決めて、それぞれの国で権利化手続きを行う必要があります。
外国意匠
外国で意匠権を取得するにはどうすればよいですか?
A. まず、どの国で意匠権を取得するのかを検討します。意匠権は各国ごとに登録されるものだからです。
権利を取得したい国が、ハーグ協定のジュネーブ改正協定の締約国であれば、一括で出願することができます。日本への出願を基礎として、優先権を主張して国際出願することも、最初から国際出願とすることもできます。
ハーグ協定のジュネーブ改正協定の締約国でない場合には、当該国に直接出願することになります。
日本への出願を基礎として、パリ条約の優先権を主張して出願することが一般的ですが、日本で保護が必要なければ、当該国のみへの出願もできます。
製品を販売しようとする国だけでなく、模倣品を生産するおそれのある国への出願も、考慮するべきです。
優先権の主張できる期間は、最初の出願から6カ月です。
外国商標
外国で商標権を取得する場合にはどうすればよいですか?
A. まず、どの国で意匠権を取得するのかを検討します。意匠権は各国ごとに登録されるものだからです。
権利を取得したい国が、マドリッド協定議定書(マドリッド・プロトコル)の締約国であれば、一括で出願することができます。必ず日本への出願/登録を基礎として、国際出願します。
マドリッド・プロトコルの締約国でない場合には、当該国に直接出願することになります。
日本への出願を基礎として、パリ条約の優先権を主張して出願することもでき、日本で保護が必要なければ、当該国のみへの出願もできます。
優先権の主張できる期間は、最初の出願から6カ月です。
著作権の及ぶ範囲
著作権は外国でも有効ですか?
A. ベルヌ条約の加盟国においては、本国で著作権を有していれば、その同盟国の法令において自国民に与えられているのと同等の保護が与えられます。
著作権の発生には、特許権のような手続きは必要ありません。著作物の創作が行われたときに、その創作者が著作権者となります。
著作権は財産権なので、移転することもできます。
ただし、本国であれ、外国であれ、著作権を主張するためには、自分が著作権者であることを証明するための証拠が必要です。
ライセンサーの権利の相続
特許のライセンス収入を、相続させることはできますか?
A. 相続というのは一般承継(包括承継)ですから、被相続人の権利・義務の一切を承継することができます。
特許権者が死亡すれば、特許権は相続人のものになりますので、ライセンス料に関わる権利も相続されると考えることができます。
ただし、ライセンス契約は特許権者と企業等の間で締結されていますから、契約内容において、何らかの特約がないかどうか、確認することをお勧めします。
また、維持年金を納付しなければ特許権は消滅します。ライセンス契約の元になる権利が消滅すれば、ライセンス収入もなくなってしまいますので、気をつけてください。
特許権の譲渡の効力
特許権の譲渡を受けました。契約が成立すれば権利者になりますか?
A. 特許権の移転の効力が発生するためには、特許庁への登録が必要となります。必ず登録を行ってください。
実用新案権、意匠権、商標権についても同様です。
ただし、相続の場合は、一般承継の時点で移転の効力が発生します。その場合は、遅滞なく特許庁に登録を行ってください。
著作権の譲渡の効力
著作権の譲渡を受けました。登録の必要はありますか?
A. 著作権の場合には、譲渡契約が成立した時点で、移転の効力は発生します。
ただし、著作権は無体財産権なので、有体物のように「占有」することができません。
そこで、二重譲渡などの問題が発生することがあります。
そのような場合、文化庁への著作権移転の登録を行っておけば、第三者対抗要件として、登録を受けていない者に対抗することができます。
譲渡契約成立の先後は問われません。
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