HOME > お知らせ

お知らせ

2018-05-07
■ 商標の出願の際の指定商品・役務について−使用意思の確認−

 商標法では、商標とは標章(マーク)であって、商品や役務(サービス)を提供等する者が「使用」をするもの、と定められています。
 特許法における「発明」の定義が、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの、であって、その「実施」を含んでいないのに対し、商標法は「使用」をする(予定も含む)ものだけを「商標」と定めています。

 商標は発明やデザインのような意味での「創作物」ではなく、その価値はあくまで商品やサービスに使用された結果、その商標に蓄積される「信用」なので、「使用」がないものは「商標」とは認められていないのです。
 仮に創作的商標であっても、その創作性自体には法的価値は認められません。

 日本の商標法の「使用をする」は、現実の使用だけでなく、出願時に使用していなくても、今後使用の予定のある商標の未必の信用も保護の必要がある、という趣旨の文言であり、出願時の使用証明は必要ありません。

 平成18年の商標法改正までは、審査実務において、この「使用意思」の確認は行われていませんでした。

 しかし、この改正で「小売等役務」が導入されたことから、出願・登録の公的費用が変わらないのに、実際には使用不可能な分野まで効力の及ぶ商標権が発生する可能性が生じたため、審査の運用が変更されることになりました。

 少し遠回りをしますが、この運用が始まった事情から説明します。

1.平成18年法改正
(1) 従来の制度
 商標法は、商品又は役務について、ある商標が使用された結果生じる業務上の信用の維持を図ることを目的としています。
 その保護の対象となる商標は、「商品」について使用する商標と「役務」について使用する商標であり、両者は概念上異なるものと認識されています。
 小売業者及び卸売業者(以下「小売業者等」といいます)は店舗設計や商品展示、接客サービス、カタログを通じた商品の選択の工夫といった、サービス活動を行っています。
 しかし、これらのサービス活動は商品を販売するための付随的な役務であり、かつ対価の支払いが商品価格に転嫁して間接的に支払われ、当該サービスに対して直接的な対価の支払いが行われていない以上、商標法上の「役務」には該当しないとされていました。
 そのため、小売業者等によるサービス活動に使用される商標は、「役務」に係る商標としては、商標法による直接の保護の対象となっていませんでした。
 ただし、小売業者等は「業として商品を譲渡する者」に該当するものとされ、「商品」に係る商標としては商標法による保護が図られていました。
 そのため、小売業者等が使用する商標について商標法上の保護を求める場合、販売する商品と関連して商品に係る商標権を取得し、商品としての側面から保護を受けることとなっていました。
(2) 改正の必要性
@ 小売業者等の使用する商標のブランド価値の帰属
 近年の流通産業の発展に伴い、商品の種別を超えた多様な商品の品揃えとこれを販売するための独自の販売形態によって、付加価値の高いサービスを提供する小売業態が発展を遂げていました。
 そこでは、需要者は小売業者の品揃え、業態等に着目した上で店舗の選択を行っており、小売業者等により使用される商標は、小売業者等によるサービス活動の出所を表示しているものといえました。
 また、その事業活動により獲得されるブランド価値は、当該サービス活動との関係で蓄積されるものといえました。
A 商標の「使用」に係る問題点
 商標法では、使用をされていない商標権を取り消すことができる審判制度が定められており、また商標権の効力も登録商標の使用を専有するものとされるなど、商標の使用という概念は商標法において権利の存続及び効力などに関わる重要な概念です。
 そして、商標の「使用」というには、「商品や役務に関連して使用されていなければならない」とされ、特定の商品や役務との具体的関連性をもって商標が表示される必要があります。
 例えば名刺や株主総会の案内の便箋?などに標章(マーク)を表示したり、店舗内に特定の商品は揃えているものの単に店舗前に立てられたのぼりに表示するだけでは、特定の商品と商標の間に具体的関連性が認められないことから、商標を商品について使用したとはいえないとされていました。
 一方で、小売業者等の使用する商標についていえば、多くが、例えば多品種の商品を扱う総合小売店における店舗名として使用される商標や、ショッピングカート、従業員の制服などに使用される商標のように、個別の商品との具体的関連性が見出しにくい態様で使用されています。
 これらは、商品の出所を表示するのではなく、小売業者等により提供されるサービス活動の出所を表示するものと考えられます。
 このように使用される商標は、小売業者等の使用する商標が商品に係る商標としてのみ保護されている場合、商標法による直接的な保護の対象となっていませんでした。
B 国際的状況
 米国においては、1950年代中ごろ以降にサービスマークの制度が認められました。
 また、最近まで日本同様に小売業者等の使用する商標をサービスマークとして認めてこなかった英国でも、2000年10月から、欧州共同体商標意匠庁においても2001年3月から、小売業者の使用する商標について、サービスマークとしての保護を認めています。
 さらに、締約国において標章の登録のための商品及びサービスの共通の分類である国際分類を採用することを目的に締結されたニース協定(日本は1990年に加盟)においても、2007年1月発効の国際分類第9版の改定に伴い、小売店等により提供されるサービスが国際分類上の役務として含まれることを明記しました。
 このように使用される商標は、小売業者等の使用する商標が商品に係る商標としてのみ保護されている場合、商標法による直接的な保護の対象となっていませんでした。
(3) 改正について
 上記のような背景により、平成18年の商標法改正において、商標法上の「役務」には、「小売及び卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」が含まれることになりました。
2.平成18年改正に伴う使用意思の確認の運用
(1) 背景
 小売等役務商標制度の導入に際しての産業構造審議会知的財産政策部会の報告書「商標制度の在り方について」においては、以下のように不使用商標に対する懸念を指摘しています。
 「商標法では出願に係る商品又は役務の区分ごとに出願手数料、商標権の登録料を納付することとなっており、国際的な商品・役務の区分を定めるニース協定において、小売業等の役務は第 35 類に分類されている。このため、同協定に従うと、一区分(第 35 類)の料金で複数の小売業等に係る役務を記載することが可能であり、出願人が使用の意思のない役務を多数指定した場合には、これらの指定役務と混同を生じるおそれのある商品について網羅的に他人の登録を排除することも可能となることが懸念される。」
 その上で、同報告書では、「小売業等に係る役務商標出願については、商標法第3条第1項柱書きの規定の運用を強化し、その使用の意思又は使用実態の確認を行うことが適切であると考えられる。」とされています。
 また、それ以外の商標登録出願についても、「商品や小売業以外の役務を指定する商標登録出願についても、取引の実情や出願実態等を踏まえ、商標法第3条第1項柱書きの運用の在り方について検討を行うことが適切であると考えられる。」とされています。
 そこで、審査において、以下の場合に拒絶理由を通知して、使用又は使用意思の確認を行うこととしました。
(2) 小売等役務を指定役務とする場合
@ 「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下、「総合小売等役務」といいます。)に該当する役務を個人(自然人をいう。)が指定して商標登録出願をした場合。
A 総合小売等役務に該当する役務を法人が指定してきた場合であって、「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をするものであるか否かについて職権で調査を行っても、出願人が総合小売等役務を行っているとは認められない場合。
B 類似の関係にない複数の小売等役務を指定してきた場合。
(3) 小売等役務以外の指定商品又は指定役務の全般
 原則として、商品及び役務の区分の1区分内での商品又は役務の指定が広範な範囲に及んでいる場合には、出願人の業務を通じて商標の使用又は使用意思を確認します。
 「広範な範囲」については、原則として、1区分内において8以上の類似群にわたる商品又は役務を指定している場合を目安として、拒絶理由を通知し、商標の使用又は使用意思を確認します。
 なお、複数類似群が付与されている業品・役務については、1個とカウントすることになっていました。
(4) 類似群とは
 類似群とは特許庁が審査において、出願された商標の指定商品又は指定役務と他人の登録商標の指定商品又は指定役務との類否を判断するための基準となる分類を言います。
 類似群を定めた「類似商品・役務審査基準」は、生産部門、販売部門、原材料、品質等において共通性を有する商品、又は、提供手段、目的若しくは提供場所等において共通性を有する役務をグルーピングし、同じグループに属する商品群又は役務群は、原則として、類似する商品又は役務であると推定するものとしています。
 そして、各グループの商品又は役務には、数字とアルファベットの組み合わせからなる五桁の共通コードである「類似群コード」が付されています。
 審査実務上、同じ類似群コードが付された商品及び役務については、原則としてお互いに類似するものと推定されます。
 類似群コードは、特許庁ホームページの商品及び役務の分類表「類似商品・役務審査基準」で確認することができます。
3.30年4月からの運用について
 商標の使用又は商標の使用の意思を確認するための審査に関する運用に係る改訂により、商第3条第1項柱書に関する審査実務が大きく変更となる事項は以下のとおりです。
 経過措置がないことから、公表日(平成30年4月2日)以降に審査・審理を行う出願(公表日に審査・審判に係属しているすべての出願を含む。)について、改訂後の審査便覧が適用されることとなりました。
(1) 類似群のカウント方法を変更します。
 すなわち、1区分内における指定商品又は指定役務に付与されている類似群数を単純にカウントすることとします。
 例えば、現在1個としてカウントを行っている複数類似群が付与されている商品・役務についても、1個ではなく、付与されている数をカウントします。
(2) 1区分内における類似群の上限数は、「22個」とします。
 従来は「7個」でしたので、1区分内でかなり広範囲の指定商品又は指定役務を選択することができるようになりました。
(3) 小売り等役務に係る取扱いについては変更しません。
 ただし、従来より広範囲の権利は取得できますが、その分、指定した商品又は役務のすべてについて、適切に使用するよう心がけねばなりませんから、いたずらに多く指定すればよいというものでもありませんので、ご注意ください。
朝陽特許事務所 お問い合わせ−特許、実用新案、意匠、商標、著作権、不正競争防止法等、知的財産についてのお問い合わせ。

朝陽特許事務所のご案内

朝陽特許事務所(ちょうよう)−東京都港区にある特許事務所。

■ 当事務所は、社内に独立した知財部門を設けることが難しい中小企業向けの特許事務所です。

<取扱業務>
・ 特許・実用新案・意匠・商標の出願代理
・ アイディア活用等のご相談
・ 知的財産権の活用コンサルティング
・ 知的財産権等についての講演・セミナー講師

<所在地>
〒105-0003
東京都港区西新橋1-22-4
Space R 3階
TEL 03-6457-9671
FAX 03-6457-9672
URL http://www.choyo-pat.jp

 大きな地図で見る