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お知らせ

2017-07-12
■ 知的財産権と刑事罰−何をやると逮捕されるのか−

 先般成立・施行されたいわゆる「共謀罪」ですが、知的財産権の侵害も対象になり得るということで、一部話題になっております。
 しかし、実はそもそも知的財産権各法に、刑事罰の規定があります。
 その簡単な内容と、実際の逮捕例を見てみることにしましょう。

1.商標法
 ニュースを検索すると、6月から7月上旬までで、数件の逮捕事例を発見することができました。
 扱いが大きいのは、東京五輪ロゴの公式ロゴの不正使用による初の摘発です。
 商標登録第5626678号「TOKYO 2020」は、その指定商品に、区分第14類「身飾品」を含み、ピンバッジは「身飾品」に該当するので、商標権の侵害となります。
 また、同時に摘発された「ピカチュウ」ですが、こちらの登録の指定商品にも、区分第14類「身飾品」を含みます。
 こうやって不当な利益を上げた代償は、権利者による損害賠償請求(民事)だけでなく、刑事罰適用の規定により、逮捕、そして懲役または罰金という形で支払わなければなりません。
 偽ブランド品の販売で逮捕されるケースを見ると、ちょっと面白いことを発見しました。
 シャネルの偽物は侵害者本人の手造りが多い(笑)ことです。
 マークの構成が単純で、製作しやすいのでしょうか。
 無地のものを安く購入し、ネット上のロゴデザインのデータを使い、シルクスクリーンでロゴを印刷し販売する、など、手口を報道しちゃっていいの?と思うくらいです。
 衣料品雑貨輸入販売会社を経営する男性が偽エルメスを販売目的で所持して逮捕された事件もありました。
 これは、外国製模倣品を輸入していたのだと思われます。
 ちょっと変わったものもあります。
 マイクロソフト社商標の偽シールが偽造された事件は、米国のみで流通しているWindows10シールの偽造という点が、興味深いです。
 買った人の中には、PC自体はWindows10を搭載していても、シールのない人もいたでしょうが、無料アップデート版をクリーンインストール版と偽って販売するために購入した人もいたかもしれません。
 高級自転車メーカーの偽造ハンドルが摘発された事件では、通常の商標権侵害とは異なる問題点もありました。
 海外高級自転車メーカーは、日本に法人を置く会社が少なく、商品の鑑定が難しいのだそうです。
 今回摘発されたのは、米国の「トレック・バイシクル・コーポレーション」社の製品で、静岡県警では押収したハンドルを米国に送ってメーカーの鑑定を受けたそうです。
2.意匠法
 ニュースを検索しても、最近意匠法違反で逮捕された例はなかなか見つかりません。
 昨年の6月に1件の逮捕事例を発見することができました。
 マーク・トウェインの言葉として、「禁煙なんて簡単だ。私は何千回もやっている」が知られていますが、筆者流に言えば、「ダイエットなんて簡単だ。私は何十回もやっている」ということになります。
 閑話休題、この手の商品は、たいがい真正品がかなり高価で、通販サイトなどを探すと、類似品で廉価なものが見つかります。
 廉価なものと真正品の効果に差があるのかないのかは、筆者の知るところではありませんが、この手の模倣品に対し「特許権」侵害を主張して争う例も、あまり知りません。
 もちろん、よく知られたトレーニング方法を、よく知られたトレーニング用具に多少の工夫を加えた程度では、特許要件である進歩性を具備しないのかもしれません。
 ちなみに、真正品の意匠登録番号は、第1500344号です。
 意匠権者は台湾の方ですが、一昨年の11月に専用使用権設定記録があります。
 日本の販売者に専用使用権のライセンスを許諾して利益を上げた上で、日本国内での権利行使を容易にしようとしたのかもしれません。
 ちなみに優先権主張の基礎となる出願は、中国にされています。
 ところで、意匠権侵害として社長と専務が逮捕された会社は、今でも営業しています。
3.特許法
 ニュースを検索しても、特許法違反で逮捕された例はまったく見つかりません。
 特許権や実用新案権の侵害による逮捕は、年間平均1〜2件あるかないかだそうです。
 特許権等は100%確定的な性質のものではなく、無効になる可能性が常に残っています。刑事罰に訴えるまえに、通常権利者は実施の差止めや損害賠償の請求(の警告)を行いますが、警告を受けた側は、無効審判を請求して対抗することが多いです。
 権利の有効性を争っている間に刑事罰を適用するのは困難なので、逮捕に至らないのではないでしょうか。
 ちなみに、資金の統計では下記のようになっていますが、特許・実用新案・意匠・不正競争防止法は「その他」となっているので、特許法についてはっきりわかりません。
 ちょっと古い統計では、下記の通りです。
 この傾向のまま推移していれば、特許法違反による検挙は、1桁の下の方だと思います。
4.著作権法
 著作権法違反の検挙数は、商標法に次いで多いです。
 ここで、特許・実用新案・意匠・商標(産業財産権)の各法(産業財産権)との大きな違いを一つだけ挙げます。
 それは、著作権法の場合は、刑事告訴には、権利者の告発を必要とするということです。
 このような罪を「親告罪」といいます。
 まず、著作権の場合、原著作物の摸倣でなければ、類似していても侵害とはなりません。
 告発なしに官憲が「模倣」を判断する、すなわち人の心の中を推測するのは、ちょっと危険な気がします。
 産業財産権は存続期間が有限で(商標のみ更新可能)、その期間を過ぎれば、全世界の共有財産(パブリック・ドメイン)となります。
 著作権にも有限の存続期間は存在しますが、日本では原則として著作者の死後50年と、かなり長いです。
 外国ではもっと長い例もあります。
 したがってパブリック・ドメインとなるのに時間がかかるのに、非親告罪とすれば、ちょっとした類似を根拠として、取り締まりが可能となってしまいます。
 しかし、TPP(どうなっちゃうのかわかりませんが)や米国とのFTAの要請、さらにいわゆる共謀罪の要請で、非親告罪かされる可能性もないとはいえなくなってきました。
 もちろん他人の創作の価値を横取りしてはいけませんが、刑事罰の適用には慎重になってほしいと思います。
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