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お知らせ

2017-04-11
■ (続)商標と歴史上の人物名−登録異議申立てにおける取扱いについて−

1.最近問題となった事例
 1月に取り上げた問題に、進展がありました。
 2017年4月6日朝日新聞
 静岡)「直虎」商標問題、浜松側の異議認めず、特許庁
 「直虎」の商標登録に対する浜松市と浜松商工会議所の異議申し立てで、特許庁は異議を認めず、登録を維持する決定をした。「直虎=井伊直虎」という市の主張を退ける内容。ただ、市は「直虎 ゆかりの地 浜松」などを商標出願しており、関連商品の販売を考える業者に引き続き活用を呼びかける方針だ。
 特許庁の決定は3月27日付。「直虎」の商標は、須坂藩13代藩主・堀直虎の地元である長野県須坂市のみそ・しょうゆの製造販売会社と、浜松市のデザイン企画会社が昨年4月に登録した。須坂は今年が堀直虎の没後150年という背景がある。
 これに対し、放送中のNHKの大河ドラマ「おんな城主 直虎」の主人公・井伊直虎を活用し、観光や関連商品販売による地域振興を図る浜松市などは「(ドラマの制作発表により)直虎の文字は歴史上の女性として広く一般に知られる井伊直虎を表す」として昨年8月に異議を申し立てた。
 特許庁は、周知され、著名な歴史上の人物名を商標登録することで公共的施策を阻害する場合、登録を認めないとしている。だが今回は@堀直虎や佐賀県小城市の小城藩11代藩主・鍋島直虎が歴史上存在し、直虎が井伊直虎を示すとは特定できないA出願審査時点でドラマ制作は発表されていたが、全国的に周知されていたとは言えない――などとして異議を退けた。
 浜松市はこれとは別に「直虎 ゆかりの地 浜松」や「出世法師直虎ちゃん」を商標出願し、「ゆかりの地」は既に認められている。市の承認を得れば使用可能で、「ゆかりの地」のロゴマークは700件以上付与されている。
 市観光・シティプロモーション課の担当者は「ロゴマークやマスコットキャラクターを活用してもらい、『出世大名家康くん』とともに『ツートップ』の活躍でブランド化を進めていきたい」と話す。
 浜松市による商標登録異議申立ての対象となっているのは、以下の2件の商標でした。
 【登録番号】商標登録第5846107号
 【登録日】平成28年4月28日
 【登録商標(標準文字)】直虎
 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
  第30類 茶,せんべい,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,
  ホットドッグ,ミートパイ,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ
 【出願日】平成27年8月28日(2015.8.28)
 【商標権者】有限会社モーク
 【登録番号】商標登録第5846295号
 【登録日】平成28年4月28日
 【登録商標(標準文字)】直虎
 【商品及び役務の区分並びに指定商品又は指定役務】
  第30類 みそ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,
  酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類
 【出願日】平成27年12月2日(2015.12.2)
 【商標権者】有限会社糀屋本藤醸造舗
 歴史上の人物名の商標登録について、商標の審査基準等を元に、説明します。
2.具体的な運用方針に基づく判断
 まだ審判公報がアップされていないので、報道だけで考察します。
(1) 当該歴史上の人物名の周知・著名性
 本取扱いにおける「歴史上の人物」には、現存する者は含まれず、周知・著名な実在した故人をいい、外国人も含まれます。また、「人物名」には、フルネーム(正式な氏名)も、また、略称・異名・芸名等も含まれ得ますが、いずれも特定の人物を表すものとして広く認識されているものでなければなりません。
 「おんな城主 直虎」の制作発表は、2015年(平成27年)8月25日で、有限会社モークの出願はその3日後です。
 3日では、全国的な周知性を得ていなかったという判断のようです。
 有限会社糀屋本藤醸造舗は、制作発表から1年後で、一定の周知性を獲得していると判断される可能性もありましたが、当該出願が「堀直虎」にちなんでいて、井伊直虎を意識していなかったということで、逆説的に周知性が認められなかったのか、などと愚考してしまいます。
(2) 当該歴史上の人物名に対する国民又は地域住民の認識
 本事情は、特定の一私人の認識というよりも、広く国民や地域住民が全体的にいかに当該歴史上の人物を捉えているかという観点での事情をいい、例えば、広く国民の敬愛を集めている、あるいは、当該歴史上の人物が当該人物の出身地、ゆかりの地等において親しまれている等の事情によって、国民や地域住民全体にあたかも「共有財産」の如く認識されているような場合には、商標登録に対し国民や地域住民全体の不快感や反発を招くことも考え得るので、国民又は地域住民が歴史上の人物名をいかに認識しているかは、社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反しないか否かの重要な情報となり得るものといえます。
 これらは、当該歴史上の人物名の利用状況を通じて明らかになることも考えられます。
 そうすると、堀直虎や佐賀県小城市の小城藩11代藩主・鍋島直虎が歴史上存在して、それぞれ地元で共有財産として認識されている以上、商標「直虎」が直ちに「井伊直虎」を示すとは特定できないと判断されたのも、むべなるかな、と思います。
 ただ、利用状況を鑑みる際に、有限会社モークが「家康・直虎 新商品開発プロジェクト」に参加している浜松の地元企業である点は、出願の経緯・目的・理由と併せて考えると、もう少し突っ込んでみてもよいのではないか、と個人的には考えます。
3.知的財産権は「早い者勝ち」の世界
 商標の異議申立ての取り消し決定率は、2割に満たないのが現状です。
 他人の名声の作り出した顧客誘引力に便乗するのでなく、自分が使用する意思が合うrのであれば、できれば使用開始前に出願しておくことをお勧めします。
 また、出願前の調査で、商品又はサービスの新名称にしようと考えていたものが、実は他人の商標権を侵害する可能性が高いことが分かり、事前に対応することができる場合も、少なくないのが実情です。
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