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お知らせ

2016-08-08
■ 特許請求の範囲の記載−権利範囲の表現−

 これまで何度か、特許権の範囲を決めるのは、「特許請求の範囲」に記載された文章であって、図面ではない、と申し上げてきました。
 その記載をどのようにするのか、を考えるのが私ども弁理士の仕事です。
 そのときに、頭をどのように使うのかを示す良い例がありましたので、ご紹介します。

 ネタ元は、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」です。

 第89話で、花山伊佐次が雑誌作りのアドバイスをする際に、文章では頭に入ってこないことも、絵にすれば簡単に頭に入るから、挿絵が重要であることを説明するシーンです。
 そこで彼がやったことが、「特許請求の範囲の記載」を考える際の頭の使い方と同じなのです。

 「まず、5mの円柱が並んで2本立っている。その2本の円柱の上部に、さらに2本の円柱が備えつけられている。横向きに備えつけられた円柱の上部の方が長く、下部は上部より短い。さあ、今言ったのは何か、教えてくれ」

 ここはセリフなので、こういう表現ですが、「さらに2本の円柱が(横向きに)備えつけられている」であるとしてみてください。

 この文章を読みながら絵を描いてみてください。
 耳で聞くよりは簡単に思えますね。

 ドラマにおける答は、「鳥居」です。

 ところで、あなたが描いた鳥居は、下の2枚のどちらでしたか?

 或いは、こんな形になった方もいるかもしれません。

 「横向きに備えつけられた円柱の上部の方が長く、下部は上部より短い」は、こういう形もあり得ます。

 「横向き円柱」の「上部」と「下部」の比較であると読むことができるからです。

 もう「鳥居」ではなくなってしまいました。

 ドラマの方は、そんなに厳密な話をしているのではなく、文章ばかりの雑誌では内容が伝わらないから、挿絵を増やせ、という話につながっていくのですが、特許請求の範囲の記載では、そうはいきません。

 井桁型の鳥居はありませんし、円柱2本を同じ高さで横に渡したものもありません。

 つまり、特許請求の範囲の記載、として考えると、花山の描写は不完全だったのです。
 もっとも、文章より絵の方が伝わりやすい、という文脈から外れるわけではありませんが。

 並んで立つ同じ長さの2本の円柱の頂上部に、1本の円柱が横向きに備えつけられ、並んで立つ2本の円柱の上部に1本の円柱が水平に備えつけられ、横向きに備えつけられた2本の円柱の、上側の円柱が下側の円柱より長い。

 こう書けば、最初の2種類の鳥居のどちらかを表すことになります。

 まあ、これも細かいことを言い出せば、まだ補足の余地はあるんですが。

 今回申し上げたかったのは、特許請求の範囲の記載は、一切の誤解を生じないようにしなければならない、ということです。

 一見読み間違えようのない「5mの円柱が並んで2本立っている。その2本の円柱の上部に、さらに2本の円柱が備えつけられている。横向きに備えつけられた円柱の上部の方が長く、下部は上部より短い」も、実は少なくとも4種類の形状が考えられ、そのうち2種類は、「鳥居」とは呼べないものになってしまいました。

 「特許請求の範囲」は、特許取得後の権利範囲を確定するものですから、くどくどと繰り返しが多く、一見分かりにくくても、とにかく1種類の読み方しかできないように記載しなければならないのです。

 ここがあいまいだと、権利範囲の周縁を巡って争いが起きます。
 とはいえ、確実にするために限定条件をやたらと付加すると、権利範囲が狭く、権利行使が困難になってしまいます。

 先ほどの鳥居の描写に、「笠木」、「島木」、「額束」などを定義して、書き込んでいくと、より限定された形状のものしか、描写しなくなってしまいます。

 夏休みの間、もしお時間がありましたら、いろいろな種類の鳥居を、言葉だけで描写してみてください。
 そして、逆にその言葉を絵にしてみて、複数の形状が出てこないかどうかを試してみると、特許請求の範囲の記載を作成する作業のことが、実感としてお分かりいただけると思います。

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