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お知らせ

2016-07-11
■ 下町ロケット(4)−中小企業と弁理士との関係のあるべき姿とは−

 さて、これまで3回にわたって、「下町ロケット」が特許を扱った物語でありながら、弁理士が登場しないことへの「恨み言」を述べてきました。
 では、小説の場面を参考に、中小企業と弁理士とは、どのような関係を築くべきか、考えてみます。

1.特許出願と技術開示
 特許出願を行えば、技術内容は公開されます。
 「下町ロケット」におけるナカシマ工業との争いでは、佃製作所の出願の「穴」を突かれて、新規開発技術の周辺技術の特許を取得されてしまう、という件があります。
 実際にこのようなことがあるとすれば、ナカシマ工業は、間違いなく佃製作所の出願書類を分析して、研究開発を行い、出願しているはずです。
 そうでなければ、出願の「穴」を突くなどということができるはずがありません。
 では、そういう事態をおそれて、出願せずに秘匿していたらどうなったでしょうか。
 機械などの場合、市場に出たものを競合他社が購入し、分解して技術内容を研究するのはごく普通に行われていることです。
 リバースエンジニアリングといいますが、これにより、新規開発技術の「キモ」を把握することは、同じ課題に取り組んできた競合会社なら、十分可能です。
 すると、必ずしも秘匿することにより、技術的優位性が保たれるわけではありません。
 むしろ、リバースエンジニアリングにより入手された技術が特許出願されていなかった場合、競合他社に特許出願されて権利化されてしまうこともあり得ます。
 それに対して、特許異議申立や無効審判の請求を行えば、自己の技術を開示しなければならず、結局秘匿し続けることができなくなります。
 しかもその結果として、その技術は権利者のいないパブリック・ドメインとなってしまいますから、誰でも利用することができるようになってしまいます。
 むしろ「穴」のない特許出願を行っておき、他社の参入の余地がないようにしておく方が得策です。
 誤解されるかもしれませんが、「穴」をなくす、というのは、すべて出願書類上に開示する、ということではありません。
 このシリーズの第1回で述べたように、その発明の効果を最低限発揮するための、構成要件の絞り込みが必要です。
 「発明が解決しようとする課題」を見極めて、「課題の解決」に必要な最低限の構成要件を抽出して、特許にしておけば、「穴」を突くことは困難になります。
 また、実施例の記載にも、注意が必要です。
 特許出願書類の中で、権利請求に係る技術については、漏れがあってはありませんが、ノウハウに属する技術を使用している部分については、むしろ開示しないようにするべきなのです。
 制作工程上で行われている「工夫」に、発明として権利を取得することができない場合や、方法の発明であって、権利を取得しても他社の侵害の立証が困難な場合などでは、請求の範囲や、明細書に記載しないでおくことも大切です。
 この、オープン/クローズの切り分けに際して、出願の専門家である弁理士が、お役に立つことができます。
 「営業秘密」には詳しくても、根本的に「技術」を理解していなければ、オープン/クローズの適切な切り分けは困難です。
 弁理士と綿密な打ち合わせを行いながら出願することで、権利の取得と、ノウハウの秘匿をバランスよく行うことが可能となるのです。
2.不正競争防止法だけではだめなのか
では、リバースエンジニアリングが困難な技術であれば、営業秘密として管理し、保特しておけばよいとも考えることができます。
 その場合は、「不正競争行為」からは守られることになります。
 窃盗、詐欺、強迫その他不正の手段で営業秘密を取得する行為と、取得自体は合法であっても、転得者(その合法に取得した者から取得した者)が不正の利益を得る目的や営業秘密保持者に損害を与える目的(図利加害目的といいます)でその営業秘密を使用、開示する行為については、法律で禁じられ、罰則もあり、損害賠償の請求もすることができます。
 ただし、それはすべて、裁判で争うことであり、事前に特定の技術を保護できるわけではありません。
 また、同じ技術を独自に開発されても、不正競争ではないので、自由に使用されてしまいます。
 まして、その独自開発技術を特許取得されてしまえば、自分の行為もその特許権の侵害となります。
 先使用権を主張するためには、これまた裁判で争わねばならず、いずれにせよ、独占力はありません。
 iPodのクイックホイールに関する技術について、日本人が勝訴した事件がありましたが、特許権があればこそです。
3.特許出願→公開のメリット
 技術は累積的に進歩するものであり、どんな先端技術でも、いずれは陳腐化します。
 秘匿にも大事な点はたくさんあるのですが、それだけにこだわっていても、業績にプラスになるとは限りません。
 出願のメリットを考えてみましょう。
(1) 市場の独占
     発明の公開の代償として、一定期間発明の実施の独占権を与えるのが、特許法の趣旨です。
     競業者の参入を阻止できるのですから、市場を独占することができ、先行者として、ブランド化も起こります。
     実際は登録商標である「ポリバケツ」や「マジックテープ」が、まるで製品の普通名称と勘違いされるほどのブランド力を獲得したのは、先行し、独占したからです。
(2) 宣伝効果
     特許技術が公開される、イコール技術内容が漏れるというデメリットだけを考えるのではなく、このような技術を開発できる優れた会社だとアピールすることができる、というメリットもあるのです。
     特許のリサーチにかかることによって販路が広がることもしばしばあります。
     また、自社の生産能力を超えたとしても、ライセンスすることで利益を上げるチャンスも芽生えます。
(3) 技術者のモチベーションアップ
     中小企業の中にも、世界最高レベルの技術を持っている例はたくさんありますが、無名の中小企業のため、従業員のプライドが低い場合があります。
     自社にとっては「当たり前」であり、俯瞰的に見れば自分たちがすごいことをやっているのに、その自覚がないということが、意外にあるんです。
     そういうノウハウの一部を特許出願し、特許を取得したことにより、自社技術が高レベルであることを自覚し、モチベーションが上がったという例が実際にあります。
     特許という客観的評価により、承認欲求が満たされ、社員の士気が上がるというメリットもあるのです。
4.再び、「弁理士」と「物語」について
 法律の条文通り物事が進むのであれば、世の中に苦労はありません。
 不都合が起きたとき、裁判で解決するには、手間と時間と費用がかかります。
 常々申し上げていることですが、華々しい「訴訟」という舞台がない、ということが、実は弁理士の存在意義なのです。
 弁理士の仕事は「転ばぬ先の杖」です。
 後の争いを避けるために、事前に権利取得するためのお手伝いをするのです。
 そこで大事なのが「先んずれば人を制す」です。
 特許を描いた「物語」の主人公にはなれませんが、実際の仕事では、ドラマチックな戦いがない方が、仕事はうまく回ります。
 かつて、弁理士に出願を頼んだら、いくつも出願されて高い費用を取られた上に、技術を全部公開されてしまった、ということがあって、弁理士に相談するのを躊躇する、という話は、しばしば聞かれます。
 しかし、現在ではそのようなことはめったにない(はず)です。
 もしそのような懸念があったら、どうぞセカンドオピニオンを、弊所までお求めください。
 ということで、このシリーズを終わりにいたします。
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