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お知らせ

2016-01-07
■ 商標の「周知性」について(6)−実際の判断基準<4条1項19号>−

 商標法では「周知性」という言葉が、規定ごとに異なる基準で判断されることを続けて述べています。
 今回は、商標の出願の際の拒絶理由及び登録後の無効理由である4条1項19号について、説明します。
 商標法4条1項とは、3条で定めた識別力のない商標であっても、所定の商標に類似等すると、登録を受けることができない、という規定です。
 19号は、指定商品・役務同士が必ずしも類似でなく、混同も生じない場合でも、他人の周知な商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的等)をもって使用をするものであれば、商標の登録阻害事由になる、という、著名商標に化体した大きな業務上の信用を保護する規定です。
 審査基準では、「外国で周知な他人の商標と同一又は類似の商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせるために先取り的に出願したもの、又は外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を強制する目的で出願したもの」や、「 日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したもの」が、本号の規定の該当例として挙げられています。
 周知性の程度としては、最終消費者まで広く認識されていなくても、取引者の間に広く認識されていれば足りるとされています。
 また、外国における周知性については、必ずしも複数の国において周知であること、日本において周知であることも必要ではありません。
 一以上の外国において周知な商標又は日本国内で全国的に知られている商標と同一又は極めて類似するものであるか、或いは、その周知な商標が造語よりなるものであるか、若しくは、構成上顕著な特徴を有するものである場合には、他人の周知な商標を不正の目的をもって使用するものと推認して取り扱うものとされています。
 不正競争防止法の適用条件とも似ていますが、「不正の目的」を要件としているので、競業者以外でも、対象となります。
1.テシー
 「テシー」の標準文字の商標で、指定商品が第11類「家庭用オイルラジエーターヒーター」等である登録が、「オイルラジエーターヒーター」、「温水器」等商標として使用されている「TESY」の商標の使用者から提起された商標登録無効審判です。
 ブルガリアには周知であるけれども、日本においては知名度のない商標について、不正の目的があり、4条1項19号に該当するとして、無効とされました。
 特許庁の判断は以下の通りです。
    使用期間:無効審判請求人は、オイルラジエーターヒーター、温水器等にTESY商標をメイン商標として、使用してきた(1999年度、2001〜2004年度カタログ)ほか、名刺や請求人発信のメールにも記載されている。なお、2007年5月に、旧社名であるフイコソタ(FICOSOTA)社」から、テシー・リミテッド(TESY LTD)へと社名変更を行なった。
     また、請求人は、TESY商標について、オイルラジエーターヒーター等を指定商品として、ブルガリアにおいては、1999年4月27日、2002年2月12日及び2004年8月9日に登録された3件の登録商標を有し、また、2002年5月15日及び2004年8月9日に国際登録し、それぞれ約30か国に登録された2件の国際商標登録を有している。
    販売実績:TESY商品の売上げ高は、1999年は、円価で約18億円であり、2005年は、約30億円、2004年度のTESY商品の販売台数は、約40万台である。また、TESY商品は、スペイン、イギリス、アイルランド、ハンガリー、ロシア、ウクライナ、クウェート、モロッコ、台湾、香港、オーストラリア、ニュージーランドなど世界各国に輸出され、2004年時点で、ヨーロッパのオイルヒーター製造会社の中で4番目に大きい企業となっている。
    広告:請求人は、例えば、ブルガリアの「bTV」テレビ分で、2003年9月17日〜30日に55回、2003年10月に28回、11月に12回、2004年4月に7回、5月に70回、6月に31回、2004年9月に38回、10月に152回などTVCMを通じてTESY商品並びにTESY商標を積極的に宣伝している。
    イベント出品:請求人は、海外展開も積極的に行い、2003年1月12日から14日まで米国シカゴで開催された「2003 INTERNATIONAL HOUSEWARES SHOW」、2004年2月25日から27日までドイツケルンで開催された「2004 Home Tech」、2005年3月10日から14日までドイツフランクフルトで開催された「2005年 ISH(国際冷暖房・衛生・空調専門見本市)」、2005年3月20日から22日まで米国シカゴで開催された「2005年 INTERNAT IONAL HOME & HOUSEWARES SHOW」、2005年5月17日から19日まで米国ラスベガスで開催された「2005年 National Hardware Show」、2005年9月20日から23日までブラジルサンパウロで開催された「2005年 FEBRAVA」などにTESY商品を出展した。
    周知性: 前記で認定した事実によれば、商標は、請求人の取扱いに係るオイルラジエーターヒーター、温水器を表示するものとして、遅くとも本件商標の登録出願時である平成17年10月28日には、少なくともブルガリアにおいて、その需要者の間に広く認識されており、その周知性は、本件商標の登録査定時においても継続していたと推認し得るところである。
    類似性: 本本件商標は、「テシー」の文字よりなるものであるから、「テシー」の称呼を生ずるものである。これに対して、請求人が引用するTESY商標は、「TESY」の文字からなるから、「テシー」の称呼を生ずるものである。
     なお、被請求人は、「TESY」は、造語であるから、称呼を一に定めることができないとして、本件商標とTESY商標が類似するとする主張は認められないと主張するが、「TESY」は、わが国で親しまれている英語風の読みにより「テシー」と称呼するのが自然であるし、仮に他の称呼が生ずることがあるとしても「テシー」の称呼が生ずることは否定できない。したがって、本件商標とTESY商標とは、「テシー」の称呼を同一とする類似する商標と認められる。
    不正の目的について
    (1)請求人が提出した証拠及び本件審判請求の理由、被請求人の答弁の理由によれば、以下の事実を認めることができる。
    ア イタリアの法人である「DeLonghi s.p.a」(デロンギイタリア)は、オイルラジエーターヒーター、対流式暖房機等のポータブル暖房器具からスタートして、暖房部門、エアーコンディショナーとエアートリートメント部門、料理・調理用品部門などの事業を展開しているメーカーである。被請求人(デロンギ・ジャパン株式会社)は、デロンギイタリアが製造する各種製品をわが国において販売することを業となす社であり、デロンギイタリア製のオイルラジエーターヒーター等をわが国において販売している。
    イ 1995年に、イタリアのトレビソで請求人のZhechko Kyurkchief、Vassil Dimov及び当時被請求人の代表者であったIslaifが会合している。
     また、 2005年10月4日に、デロンギ製品の各国ディストリビューターを集めた会議が、イタリアのトレビソで開催され、請求人のZhechko Kyurkchief、Vassil Dimov及び被請求人の代表者である、Patrick Lauerが参加し、両者は話し合いをした。
    ウ デロンギイタリアフィコスタ社とは、ディストリビューターとメーカーの関係にあり、ビジネスパートナーであった。また、2005年9月頃までに、は、共同でブルガリアのシューメンで暖房器具工場を設立する可能性を探っていた。
    (2)請求人がオイルラジエーターヒーター等のTESY商品に使用するTESY商標がブルガリア国内において、遅くとも本件商標の出願時(平成17年10月28日)までには、需要者の間に広く認識されていたものと認められるうえ、世界各国輸出され、ヨーロッパのオイルヒーター市場では第4位の地位を占めるようになり、専門バイヤーが参加する展示会へも積極的に参加していることが認められることは、上記1のとおりである。
     そして、上記(1)に認定したところによれば、被請求人は、デロンギイタリアの子会社であって、デロンギイタリアの製造するオイルラジエーターヒーター等の製品をわが国において販売していたものであり、自己の扱う同種商品の市場動向については、注意を払うのが通常であるから、請求人のTESY商標の上記周知性にかんがみると、被請求人は、TESY商標が請求人の業務に係る商品表示であることを認識していたものというべきであるばかりでなく、請求人は、デロンギイタリアのディストリビューターであり、被請求人とともに、イタリアのトレビノで開催された、少なくとも1995年及び2005年の会合に参加した事実が認められるばかりでなく、デロンギイタリアと請求人とが20万代から30万台規模の工場を共同で設立する可能性を探っていたものであるから、デロンギイタリアの子会社である被請求人も共同設立者及びその業務内容についてある程度認識していたものと推認される。
     そうすると、それにもかかわらず被請求人がTESY商標と類似する本件商標をあえて採用し、TESY商品と同一又は類似の商品を指定商品として登録出願したのは、ブルガリア国で周知であり、オイルヒーターのヨーロッパ有数の規模となっている被請求人のTESY商標が、日本において登録されていないことを奇貨として、不正の目的をもって先取り的に登録出願し、登録を受けたものと認めるのが相当である。
    結論:以上のとおり、請求人が引用するTESY商標は、本件商標の出願時(平成17年10月28日)及び登録査定時(平成18年5月11日)において、請求人の業務に係る商品を表示するものとしてブルガリア国内で需要者の間に広く認識されていたものであるところ、本件商標は、請求人のTESY商標と類似の商標であって、かつ、不正の目的をもって本件商標を取得し、使用するものと認められる。
     したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものであるから、同法46条1項の規定により無効とすべきものである。
2.セレブール(バーキン立体形状)
 無効審判において、商標登録されていない立体的形状が、商標的機能を発揮しているため、それに類似するとされた商標登録指が無効とされた事例です。
 ちなみに、この審判が請求された時点で、バーキンの立体的形状について、商標登録出願はされていましたが、3条1項3号を理由とする拒絶査定を経て、拒絶査定副不審判を請求している最中だったので、未登録でした。
 その後、審判で3条2項に該当することが認められ、登録を受けることができました。
 3条1項3号と3条2項については、
 商標の「周知性」について(2)−(http://www.choyo-pat.jp/information/topics_1510.html)
 商標の「周知性」について(3)−(http://www.choyo-pat.jp/information/topics_1511.html)
を、ご覧ください。
 無効審判請求は、4条1項10号、15号、19号を理由としてなされました。
 被請求人は答弁せず、審判官合議体は、19号を採用しました。
 19号は、10号、15号との重複適用はされない規定です。
 10号を採用しなかったのは、指定商品・役務が非類似であるため、15号を採用しなかったのは、出所の混同を認定しなかったためではないかと、私は推定しています。
 特許庁の判断基準は以下の通りです。

    無効とされた登録商標

    引用商標

    引用商標の周知著名性
    請求人の提出に係る証拠によれば、引用商標に関し、以下の事実が認められる。
    (ア)引用商標の立体的形状を有するバッグは、1892年に販売が開始された「オータクロア」を原型として、フランスの女優ジェーン・バーキンのために1984年に発表、販売が開始され、以後、該女優に因み「バーキン」と称されるようになった。
    (イ)バーキンは、その多くが1個100万円超え高価なものは400万円超える高級バッグであり、各種雑誌に多数紹介されている。これらの雑誌等においては、バーキンが請求人の商品であることが明示され、バーキンを正面又は側面から撮影したカラー写真が掲載されているほか、バーキンは「20年間変わらず愛され続けるバッグ"バーキン"」、「大人の女性がひとつはもっていたい究極の定番バッグ」、「最上のデザイン×最上の素材」、「ベージュの名品」)、「誰もが憧れる普遍の名作、エルメスの『バーキン』」、「誰もが認める名品」、「世界中の女性が憧れるバッグの最高峰」、「大人の女性が持つべき名品」などと称されている。また、これらの雑誌等の多くは、本件商標の登録出願前に発行されたものである。
    販売実績: バーキンの売上個数及び売上高は、1998年に年間3000個、16億7000万円を超え、さらに2006年には10000個、97億2000万円を超え、2007年に12081個、約125億5500万円2008年に14672個、約162億6600万円、2009年に17883個、約192億900万円と年々増加している。
    広報・広告等:請求人は、我が国において札幌、仙台、東京、名古屋、熊本、福岡等全国に49の店舗を有している。請求人の銀座店オープンの際には、バーキンを初めとする請求人の取扱いに係る商品のみを特集した雑誌が発行された。請求人は、1985年から1996年までの間、バーキンの広告宣伝費として約6200万円を費やしたが、上記(イ)の雑誌における紹介のほとんどは、その後に他人によってなされたものである。
    立体的形状の商標的態様:他の同種の商品と識別し得る独自の特徴を有しているものといえる。そして、バーキンが、その形状を撮影した写真と共に、雑誌等において多数回にわたり紹介されてきたことなどの広告宣伝の状況等に照らすと、バーキンの形状は、本件商標の登録出願前には既に、請求人の業務に係る商品であるバッグを示すものとして、取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきである。
     してみれば、バーキンの形状からなる引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示する商標として、取引者、需要者の間に広く認識されていたものといわなければならない。
    本件商標と引用商標との対比:本件商標は、別掲1のとおり、文字と図形の組合せからなるところ、文字部分図形部分(バッグ図形)とは色彩を異にしているばかりでなく、両者が常に不可分一体にのみ認識され把握されるべき格別の理由は見いだし難いから、それぞれの部分が独立して商品・役務の出所識別標識としての機能を果たすものというべきである。
     そして、本件商標のバッグ図形は、一見して直ちにバッグを表したものとして認識し理解されるものであるばかりでなく、その表現方法を見ると、底辺がやや長く台形である点、円弧状のハンドルがある点、上部を覆う蓋部を有し、横方向に略3等分する位置に切り込みがある点、その上にベルトがあり、該ベルトには中央に固定具を有しその左右に補助固定具を有する点等において、前示バーキンの形状を正面から見た場合の特徴をことごとく捉えたものとなっている。
     そうすると、本件商標に接する取引者、需要者は、バッグ図形から周知著名となっている引用商標を連想、想起する場合が少なくないとみるのが自然であり、本件商標は、引用商標と外観上相紛らわしく類似するものというべきである。
    不正の目的:前示のとおり、引用商標は、請求人の業務に係る高級バッグを示す商標として周知著名となっていること、本件商標は、バーキンの形状と酷似した図形を含むものであって、引用商標と類似するものであること、本件商標の指定商品及び指定役務はいずれもバッグに関係するものであること、本件商標の構成中の「Rent a Brand Bag」の文字からは、ブランド品といわれる高級バッグの貸与の意味合いが容易に認識し理解されること、また、被請求人は、実際にブランド品のバッグの貸与を業として行い、バーキンも取り扱っている事実が認められること、などを総合すると、被請求人は、請求人及び周知著名となっているバーキンの存在を熟知していたものというべきである。
     そうすると、被請求人は、バーキンの周知著名性を十分認識した上で、その名声や信用にただ乗りし、バーキンに化体した請求人の信用を利用して利益を得るために、本件商標の登録出願をしたものと優に推認することができるから、被請求人には「不正の目的」があったものというべきである。
    結論:以上によれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものに該当するものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
 ちなみに、引用商標の登録後の指定商品は、第18類「 ハンドバッグ」でした。
 登録を無効とされた商標の指定商品・役務は、第18類「皮革,かばん類,袋物,携帯用化粧道具入れ」、第35類「かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」、第37類「かばん類の修理,袋物の修理」、第39類「旅行用かばん類の貸与,旅行用袋物の貸与」及び第45類「かばん類の貸与(但し旅行用のものを除く。)、袋物の貸与(但し旅行用のものを除く。)」でした。
 非請求人は、たぶん軽い気持ちで自己の商標の一部にバーキンの形状を取り入れたのでしょうが、有名なものを取り入れる、という行為は、「タダ乗り」の意図を推定されます。
 商標というのは、本質的には自他商品・役務の識別記号ですから、一部であっても、有名なもののパクりはするべきではありません。
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