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お知らせ

2015-12-09
■ 商標の「周知性」について(5)−実際の判断基準<4条1項15号>−

 商標法では「周知性」という言葉が、規定ごとに異なる基準で判断されることを続けて述べています。
 今回は、商標の出願の際の拒絶理由及び登録後の無効理由である4条1項15号について、説明します。
 商標法4条1項とは、3条で定めた識別力のない商標であっても、所定の商標に類似等すると、登録を受けることができない、という規定です。
 15号は、商標同士や指定商品・役務同士が必ずしも類似でない場合でも、既存の他人の商品・役務と混同を生ずるおそれがあれば、商標の登録阻害事由になる、という、著名商標に化体した大きな業務上の信用を保護する規定です。
 審査基準では、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある場合」とは、その他人の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合のみならず、その他人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品又は役務であると誤認し、その商品又は役務の需要者が商品又は役務の出所について混同するおそれがある場合をもいう、とされています。
 著名商標を使用する企業本体と混同される(狭義の混同)だけでなく、その関連会社や子会社の商品やサービスではないか、と思われること(広義の混同)も含みます。
 その企業本体や、関連会社・子会社がその商品・サービスを実際に提供しているかどうかは、問題ではありません。
 あの会社や、その関連等なら、そんなこともするかもしれないな、という程度で、広義の混同は成立します。
 15号かっこ書で、10号〜14号との重複適用を排除していますので、混同を生じるとしても、商標が同一又は類似で、商品・サービスが類似の場合には、先月述べた10号が適用されることになります。
1.ヨイチュー
 「ヨイチュー」の縦書片仮名文字の商標で、指定商品が第30類「菓子及びパン」である登録が、「ソフトキャンディー(菓子)」の商標として使用されている「ハイチュウ」、「Hi−CHEW」、「HICHEW」の商標の使用者から提起された商標登録無効審判です。
 構成において異なるところはあるけれども、時と処を異にする取引場面においては、称呼において、彼此取り違えるおそれがある商標であり、指定商品は同一なので、混同のおそれがあり、4条1項15号に該当するとして、無効とされました。
 特許庁の判断は以下の通りです。
    使用期間:請求人は、昭和50年6月に、「ハイチュウ」、「Hi−CHEW」を販売開始した。その後、昭和61年には、当該商品に商標「HICHEW」が表示されるようになった。当該商品について途中で商品の形態の変更はあったが、その販売は、発売以降途切れることなく継続され、商標「HICHEW」、同「ハイチュウ」についても、本件商標(ヨイチュー)の出願時及び査定時を経て、継続して当該商品に表示され使用をされた。
    販売実績:発売以降20年間の累計金額で約2,000億円を超え、平成13年度から平成17年度の5年間の販売量は、年度平均約1億7,400万個、年度平均の売上高が約136億円にのぼる。平成14年ないし平成16年のソフトキャンディー市場における平均シェアは、約34%(請求人調査。
    アンケート調査:株式会社ビデオリサーチの「2003年度『森永ハイチュウ』郵送調査報告書」によれば、男女2歳から65歳及び男女2歳から小学3年生の母親を対象とした調査において、「ハイチュウ」の認知率が関東で92.8%、関西で97.4%であり、「ハイチュウ」の摂食経験は、関東で84.4%、関西で90.4%
     男女2歳から小学3年生の母親及び小学4年生から39歳の男女を対象とした株式会社ビデオリサーチの「2004年『森永ハイチュウ』郵送調査報告書」においても、「ハイチュウ」の認知率が関東で99%、関西で100%となっていたと報告。
     さらに、株式会社ビデオリサーチの「2005年度『森永ハイチュウ』ブランド評価調査結果ご報告書(母親版)」及び「同(本人版)」によれば、「ハイチュウ」の認知率が関東、関西ともにほぼ100%となっていたと報告。
    公的組織の証明東京商工会議所は、平成18年7月13日付で、商標「ハイチュウ」について、平成13年4月15日から現在(証明日)に至るまで請求人が継続して菓子・パンに使用していること、取引者及び需要者の間に広く認識されていることの証明
     全日本菓子協会は、平成18年4月14日付で、「HICHEW」「HI−CHEW」「ハイチュウ」の文字からなる商標等について、昭和50年から使用され、テレビ、雑誌、その他の媒体を通じて全国的に広告宣伝されてきた結果、請求人に係る商品を表示するものとして取引先及び需要者間に広く認識され、全国的に周知性を取得するに至っていることを証明
    周知性: 30年以上にわたり使用、請求人商品の販売数量、その市場シェア、継続的な広告宣伝活動、第三者による客観的な調査結果及び証明を綜合してみれば、請求人が同人の業務に係るソフトキャンディーについて永年使用した結果、「ハイチュウ」は、本件商標の査定時・出願時において既に、その取引者、需要者の間に相当に広く認識され、全国的に周知な商標となるに至っていたと認められる。
    独創性:引用各商標(ハイチュウ等)を構成する文字は、いずれも、既存の辞書には掲載されておらず、巷間一般に使用されている文字とはいえず、その構成各文字の配列等からみて、既存の語を結合させて構成されたものとも認められず、唯一請求人に係る標章というべきであって、その独創性の程度は相当に高い
    類似性:本件商標(ヨイチュー)と引用各商標(ハイチュウ等)とは、構成において異なるところはあるけれども、時と処を異にする取引場面においては、称呼において、彼此取り違えるおそれがある。本件商標と引用各商標との類似性の程度は、決して低いものということはできない
    商品間の関連性等:本件商標(ヨイチュー)の指定商品は「菓子及びパン」であり、引用各商標(ハイチュウ等)の使用商品は、「ソフトキャンディー」である。
     しかして、「ソフトキャンディー」は、菓子の概念に含まれる商品であることが明らかなものであり、また、「ソフトキャンディー」以外の「菓子及びパン」とは、製造者や販売者を共通にする類似の商品と認められるものであるから、本件商標の指定商品と引用各商標の使用に係る商品とは、その共通性や関連性が極めて高い商品である。
     さらに、これらの商品は、需要者を共通にし、その需要者は、幼児を含む一般消費者であり、ソフトキャンディーなどの購入者には未成年の購入者が多い実情が認められることから、商品を購入する際の注意力の程度が必ずしも高い者とは限らない
    出所混同のおそれの有無:引用各商標(ハイチュウ等)の周知性の高さ、その独創性の程度、商標間の類似性の程度、使用される商品の共通性、需要者の共通性やその注意力の程度、取引の実情等を総合勘案してみると、本件商標(ヨイチュー)の登録時・出願時において、本件商標を指定商品に使用した場合、これに接する需要者が、当該商品を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品「HICHEW」「ハイチュウ」の姉妹商品やそのシリーズ商品であるかのように誤認し、商品の出所について混同するおそれがある。実際に取り違え等混同を生じさせている事例もある。
    結論:したがって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同するおそれがある商標に当たるものであるから、商標法第4条第1項第15号に該当するものと認められる。
2.あぐー
 無効審判において、指定商品の一部が、混同のおそれがあるとして無効とされた事例です。
 豚肉のブランド名(登録商標)を引用し、引用登録商標の指定商品とは非類似でありながら、指定商品中豚肉を原料としているのではないかと誤認し、出所の混同を生じるおそれがあるものが、無効とされました。
 特許庁の判断基準は以下の通りです。
    使用期間平成19年10月19日にJAおきなわ銘柄豚推進協議会設立総会にて、「あぐ〜」の定義、引用商標の取扱い要領、JAおきなわ銘柄豚推進協議会会則、商標使用許諾契約書が定められた。
     JAおきなわは、「あぐ〜」肉豚の品質維持・管理規定を定めて、商品の【品質管理を行っているいる上、「あぐー」のロゴを29類食肉等を指定商品として商標登録し、商標管理をも行っている。
    広報・報道:「あぐ〜」肉豚のブランド化を官民連携で進めていることは、「沖縄タイムス」、「琉球新報」の各新聞で報道されたほか、請求人沖縄県物産公社等のホームページでも紹介されている。
    認知度:沖縄発の情報だけでなく、他の地方の食肉業者のホームページなどにも、「あぐー」肉豚の品質の良さが掲載されている。
    周知性:本件商標の登録出願時には既に、「あぐー」は、JAおきなわの業務に係る商品「豚肉」を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていたものというべきである。
    商品の出所の混同のおそれについて:本件商標に係る本件商品と引用商標が使用されている商品「豚肉」とは、原材料加工品の関係にあり、現に請求人の業務に係る「豚肉」を材料にした「肉まんじゅう」や「ぎょうざ」が販売されているほか、デパートスーパーマーケット食料品売場では両者が隣接した場所で販売される場合が多く、両商品を購入する需要者層も共通しているなど、両者は密接な関係を有するものといえる。そして、本件商標と引用商標とは、同一の平仮名から構成されるものであって、酷似したものである。かかる事情の下において、本件商標をその指定商品中の本件商品について使用した場合には、これに接する取引者、需要者は、周知著名となっている引用商標ないしは請求人を連想、想起し、該商品が請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同を生ずるおそれがあるものというべきである。
    結論:指定商品中の「ぎょうざ、サンドイッチ、しゅうまい、たこやき、肉まんじゅう、ハンバーガー、ピザ、べんとう、ホットドッグ、ミートパイ、ラビオリ」についてその登録を無効にすべきものである。
 その結果、本件商標の指定商品は、「菓子及びパン,アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,調味料,香辛料,コーヒー豆,穀物の加工品,すし,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす」となりました。
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