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お知らせ

2015-11-09
■ 商標の「周知性」について(4)−実際の判断基準<4条1項10号>−

 商標法では「周知性」という言葉が、規定ごとに異なる基準で判断されることを3カ月続けて述べています。
 今回は、商標の出願の際の拒絶理由及び登録後の無効理由である4条1項10号について、説明します。
 商標法4条1項とは、3条で定めた識別力のない商標であっても、所定の商標に類似等すると、登録を受けることができない、という規定です。
 10号は、使用により出所表示機能等を獲得したものであれば、登録を受けていなくても周知性獲得後に出願された商標の登録阻害事由になる、という、未登録周知商標の救済規定です。
 審査基準では、最終消費者まで広く認識されている商標のみならず、取引者の間に広く認識されている商標を含み、また、全国的に認識されている商標のみならず、ある一地方で広く認識されている商標をも含む、とされています。
 未登録でありながら登録阻害事由となるのですから、ちょっとだけ有名、というのでは該当しない、ということです。
 その周知商標と出願に係る商標が同一又は類似で、その周知商標が使用されている商品・サービスが、出願に係る指定商品・指定役務と同一又は類似の場合に、登録を受けることができません。
1.コンピューターワールド
 「コンピューターワールド」の横書き片仮名文字の商標で、指定商品が第26類「新聞、雑誌」である出願が、「新聞」の題号として使用されている「COMPUTERWORLD」の欧文字商標の使用者から提起された商標登録無効審判の審決取消訴訟です。
 需要者が一定分野の関係者に限定されている商品の場合は、その需要者間で周知であれば4条1項10号に該当するとして、無効とされました。
 知財高裁の判断は以下の通りです。
    判断規範:商標法4条1項10号所定の「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者間に広く認識されている商標」とは、(1)主として外国で商標として使用され、それが我が国で価値のある商品、権威のある商品を表示する商標として報道、引用された結果「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者間に広く認識され」るようになった商標及び(2)わが国で商標として使用された結果「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者間に広く認識され」るようになった商標を言うと解するのが相当であって、その理由は、同号所定の要件が商標登録拒絶および無効事由とされた立法趣旨には、商品の出所の混同を防止することが含まれることが明らかであり、この立法趣旨からみれば、(1)の商標と、(2)の商標とを区別して、(1)の商標又は(1)に類似する商標の登録を認めることによる商品の出所の混同を容認する理由はなく、また、同号には「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者間に広く認識され」るに至った原因を(2)の商標にのみ限定する文言もなく、さらに、「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者間に広く認識されている商標」とは、わが国で全国民的に認識されていることを必要とするものではなく、その商品の性質上、需要者が一定分野の関係者に限定されている場合にはその需要者間に広く認識されていれば足りるものである(需要者において商品の出所の混同が生じてはならない)。
    結論:原告は昭和42年以降米国で「COMPUTERWORLD」を表題とした週刊新聞を発行しているが、本件商標の出願時に前記(1)及び(2)に言う商標となっていたとするに足りる証拠はないが、コンピューターが米国で開発・企業化され発展してきたものであり、従来、わが国のコンピューター関連業界等米国におけるコンピューター関連情報に大きな関心を払ってきたことは当裁判所に顕著な事実であるところ、昭和45年頃から同55年頃までの間に「COMPUTERWORLD」紙の記事の要約・表題等がわが国で発行された海外のコンピューター関連のニュースを紹介する雑誌・刊行物に頻繁に紹介され、それらの紹介記事には出典として「COMPUTERWORLD」紙の名が明示されていること、また、昭和48年に被告が発行する、その分野でわが国の有力な新聞である「電波新聞」第一面の記事中に「米国で最も権威あるといわれる「COMPUTERWORLD」紙」と紹介していること等からすれば、遅くとも本件商標の出願時前には「COMPUTERWORLD」紙の名は、わが国のコンピューター関連業界等に携わる者の間に広く認識されていたものと認められるから、本件引用商標は上記(1)の商標となっていたものと認められる。
2.「ANDERSEN」、「アンダーソン」
 無効審判において、需要者が一定分野の関係者に限定されている商品の場合は、その需要者間で周知であればよいとされた事例です。
 対象となったのは、「ANDERSEN」の欧文字及び「アンダーソン」の片仮名文字を横書き併記してなり、第7類「建築または構築専用材料、セメント、木材、石材、ガラス」を指定商品とする商標です。
    判断規範:商標法4条1項10号の趣旨は、商品の出所の混同の防止にあるというべきところ、昨今の経済活動の国際的交流の盛んな状況下において、同号所定の「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」とは、わが国において商標として使用された結果「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識され」るようになった商標だけをいうのでなく、主として外国で使用され、それがわが国において、報道、引用された結果、わが国において「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識され」るようになった商標を含むものと解すべきである。
     そして、「他人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標」とは、わが国において、全国民的に認識されていることを必要とするものではなく、その商品の性質上、需要者が一定分野の関係者に限定されている場合には、その需要者の間に広く認識されていれば足りるのである。
    結論:請求人の製造販売にかかる「木製窓(窓枠を含む。)」が商標「Andersen」の下に、本件商標の出願前である少なくとも昭和55年頃より、被請求人ほかによってわが国に輸入され、販売されていたものであると認定し得るから、本件商標は、その出願の日前より、他人の業務に係る商品を表示するものとして、既に、その需要者の間に広く認識されるに至っていたものと容易に推認でき、これに反する事実はない。
     また、請求人の製造、販売に係る「木製枠」「木製2重ガラス窓」等家屋の窓及び窓枠は、本件商標の指定商品「建築または構築専用材料、セメント、木材、石材、ガラス」の範疇に属する商品であるというべきである。
3.DCC
 全国的に流通する日常使用の一般的商品については、全国にわたる主要商圏同種商品取扱業者の間に相当程度認識されているか、あるいは、1県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたって、少なくともその同種商品取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するものと解すべきであるとされた事例です。
 対象となったのは、「DCC」の横書き文字商標で、第29類「茶、コーヒー、ココア、清涼飲料、果実飲料、氷」を指定商品とするものです。
 知財高裁の判断は以下の通りです。
 コーヒーは、いわゆる専業的な喫茶店のみならず食堂、レストラン、グリル一般でも営業用に供され、一般家庭でも日常手軽に消費される嗜好品であって、全国的に流通し、地域的嗜好特性も格別認めがたい商品であり、原告(未登録商標使用者)製品が独自の原材料の独占、調合若しくは焙煎法、これに基づく他と際立った独特の風味をもって知られている、との立証もないことを前提としています。
    判断規範:かかる全国的に流通する日常使用の一般的商品について、商標法第4条第1項第10号が規定する「需要者の間に広く認識されている商標」といえるためには、それが未登録の商標でありながら、その使用事実にかんがみ、後に出願された商標を排除し、また、需要者における誤認混同のおそれがないものとして、保護を受けるものであること及び今日における商品流通の実態及び広告、宣伝媒体の現況などを考慮するとき、本件では、商標登録出願の時において全国にわたる主要商圏の同種商品取扱業者の間に相当程度認識されているか、あるいは、狭くとも1県の単位にとどまらず、その隣接数県の相当範囲の地域にわたって、少なくともその同種商品取扱業者の半ばに達する程度の層に認識されていることを要するものと解すべきである。
    結論:原告の使用によってDCCが、主として専業的な喫茶店をはじめとする当該継続的取引先の相当数の取扱業者の間で、原告の営業ないし原告取扱いのコーヒー等の商品を表示するものとして認識されていたことこそうかがわれるけれども、その主な販売地域である広島県下でも専業的な喫茶店等に対する取引占有率は最高30パーセント程度に過ぎず、右以外の一般的な食堂、グリル、レストラン等の存在をも考慮すると、DCCを原告の業務に係る商品を表示するものとして認識していた同種商品取扱業者の比率は更に下まわるものといわねばならず、隣接県である山口県、岡山県等におけるそれらの比率は遥かに広島県に及ばないものであるから、商標法第4条第1項第10号に規定するような需要者の間に原告の業務に係る商品を表示する商標として広く認識されていたものとまではいい難い。
4.「SHINAGAWA INTER CITY」「品川インターシティ」2段書き
 周知であるといえるためには、特別の事情が認められない限り、全国的にかなり知られているか、全国的でなくとも、数県にまたがる程度の相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られていることが必要であるとされた事例です。
 対象となったのは、「SHINAGAWA INTER CITY」及び「品川インターシティ」の2段書き文字商標で、第36類「建物の貸与、建物の売買、土地の売買、土地の貸与」等を指定役務とするものです。
 知財高裁の判断は以下の通りです。
    判断規範:商標法4条1項10号、15号による周知商標の保護は、登録主義をとる我が国の商標法の下で、例外的に、未登録商標であっても、それが周知である場合には、既登録商標と同様に、これとの間で出所の混同のおそれを生じさせる商標の登録出願を排除することを認めようとするものである。しかも、商標登録出願が排除されると、出願人は、当該出願商標を、我が国のいずこにおいても、登録商標としては使用することができなくなる、という意味において、排除の効力は全国に及ぶものである。これらのことに鑑みると、周知であるといえるためには、特別の事情が認められない限り、全国的にかなり知られているか、全国的でなくとも、数県にまたがる程度の相当に広い範囲で多数の取引者・需要者に知られていることが必要であると解すべきである。
    結論首都圏における人口は約4000万人に上ること、首都圏においては、多数の業者によって膨大な不動産情報が発信されていることを前提にして考えた場合、引用商標が首都圏において取引者・需要者の間に広く知られているという状態が生まれるためには、原則として、引用商標につき、取引者・需要者に知らせるための活動が、平均的な不動産業者が一般に行う程度を大きく超えて行われることが必要であり、そうでない限り、たとい、長年使用してきたとしても、上記状態は生まれることはないというべきである。ところが、原告の主張するところを前提にしても、引用商標につき上記のような活動がなされたものということはできず、本件全証拠によっても、このような活動がなされたことを認めることはできない。引用商標につきこのような活動がなくても上記状態が生まれ得ると考えさせるものは、本件全証拠を検討しても見いだすことができない。
     したがって、引用商標の周知性が認められない以上、本件商標が、商標法4条1項10号に該当しないとした審決に誤りはない、というべきである。
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