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お知らせ

2015-10-08
■ 商標の「周知性」について(3)−実際の判断基準<3条2項(後編)>−

 前回、商標法では「周知性」という言葉が、規定ごとに異なる基準で判断されることを述べました。
 今回からは、実際にどのように判断されたかについて、説明します。
 まず、3条2項について、今回は特に立体商標について述べます。
 商標法3条2項とは、1項で定めた識別力のない商標であっても、使用により出所表示機能等を獲得したものであれば、登録を受け得る、という救済規定です。
 審査基準では、全国レベルの周知性を要求し、また、登録を受け得るのは、実施に使用されて識別力等を獲得した商標と同一の商標でだって、その使用商品・サービスと同一の指定商品・役務としているものだけ、とされています。
 立体商標においては、単に商品又は商品の包装の形状を表したものに過ぎないものは、原則として3条1項3号の拒絶理由が通知されます。
 それに対し出願人は、全国的周知性を有しているので、3条2項の適用を受けることができる、と主張して、登録を受けようとします。
1.マグライト
 商品の形状を立体商標として認めた嚆矢といえるでしょう。
 立体商標制度が導入された理由は、保護ニーズがあり、実際に立体を平面図形に表して登録されているものがある点、不正競争防止法の「商品表示」において商品の形状が認められていること、国際的調和の観点、などが挙げられます。
 ただ、導入時点で予定されていたのは、ケンタッキーフライドチキンの「カーネル・サンダース像」のようなものだったと思います。
 実際に、カーネル・サンダース像や不二家のペコちゃん、ポコちゃんなどは、平成9年の制度導入直後に出願され、登録を受けています。
 商品の形状そのものについてマグ・インスツルメント・インコーポレーテッドが出願したのは、平成13年1月です。
 拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を経て、知財高裁で審決取消訴訟に勝ち、登録を受けることができました。
 知財高裁の判断は以下の通りです。
    使用期間:本件商品は,本願商標と同一の形状を有し,その指定商品に属するものであるところ,原告により1984年に米国において発売されて以来,形状を変更せず,一貫して同一の形状を備えている。
    販売実績:我が国においては,本件商品は,1986年に本格的な輸入販売が開始された後,三井物産を総代理店として販売が拡大され,2000年3月期には売上高5億7700万円,本数にして60万7000本,2001年3月期には売上高5億0800万円,本数にして55万1000本に達し,2007年2月現在における販売小売店舗数は約2700店舗に及んでいる。
    広報・広告等:本件商品は,1985年から雑誌記事において頻繁に掲載されるようになり,新聞雑誌等を中心に多額の広告費用を掛けて多数の広告が掲載されている。
     本件商品は,その形状が,従来の懐中電灯に見られないものとして,デザイン性を高く評価され,我が国やドイツなどにおいてデザイン賞を受賞しているとともに,米国及びドイツの美術館の永久コレクションとして保存されているものであり,需要者の間でも,その堅牢性,耐久性と並んでデザイン性が関心を集めている。
     本件商品の広告宣伝においても,堅牢性,耐久性と共にデザイン性が強調されており,本件商品の写真のみを掲げた広告など,本件商品の形状を需要者に印象づける広告宣伝が行われている。
    他人による使用:原告は,我が国の内外において,本件商品に類似した形状の他社の懐中電灯に対して販売の差止めを求める法的措置を採っており,その結果,本件商品と類似する形状の商品は市場において販売されていない。
    立体形状の「商標性」:本件商品には,フェイスキャップの周囲に,登録商標記号(○にR記号)が極めて小さく右肩部分に添えられた右側頭部様図形,同様に登録商標記号が極めて小さく右肩部分に添えられた「MINI MAGLITE」の英文字及びそれよりも小さな「MAG INSTRUMENT」(原告の名称)の英文字が記載されているが,これらの記載がされている部分は,本件商品全体から見ると小さな部分であり,また,文字自体も細線により刻まれているものであって,目立つものではない
     原告の主力商品は本件商品を中心とするマグライトシリーズの懐中電灯であり,また,原告の名称である「MAG INSTRUMENT」は当該懐中電灯との関連を示すだけの内容であって,当該名称自体に独立した周知著名性は認められない。
    結論:上記に挙げた点に照らせば,本件商品については,昭和59年(国内では昭和61年)に発売が開始されて以来,一貫して同一の形状を維持しており,長期間にわたって,そのデザインの優秀性を強調する大規模な広告宣伝を行い,多数の商品が販売された結果,需要者において商品の形状を他社製品と区別する指標として認識するに至っているものと認めるのが相当である。本件商品に「MINI MAGLITE」及び「MAG INSTRUMENT」の英文字が付されていることは,本件商品に当該英文字の付されている前記認定の態様に照らせば,本願商標に係る形状自他商品識別機能を獲得していると認める上での妨げとなるものとはいえない(なお,本願商標に係る形状が,商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標といえないことはいうまでもない。)。
     また,被告の提出に係る乙号各証には,ライト頭部がやや大きめで胴体部分が円筒形の形状を有する他社の懐中電灯が複数掲載されているものの,前記1(2)ア記載のA〜Eの特徴をすべて備えた懐中電灯は存在しない。
     そうすると,本願商標については,使用により自他商品識別機能を獲得したものというべきであるから,商標法3条2項により商標登録を受けることができるものと解すべきである。
2.コカ・コーラボトル
 文字を付して使用されていた、商品の容器の形状について、文字抜きで立体商標として認められた例です。
 平成15年7月の出願で、拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を経て、知財高裁で審決取消訴訟に勝ち、登録を受けることができました。
 知財高裁の判断は以下の通りです。
    使用期間:リターナブル瓶とほぼ同じ形状の瓶を使用した原告商品は,既に,1916年(大正5年)に,アメリカで販売が開始され,開始当時から,その瓶の形状がユニークかつ特徴的であるとして評判になったこと,そして,我が国では,リターナブル瓶入りの原告商品は,昭和32年に販売が開始されて以来,その形状は変更されず,一貫して同一の形状を備えてきた。
    販売実績:リターナブル瓶入りの原告商品の販売数量は,販売開始以来,驚異的な実績を上げ,特に,昭和46年には,23億8000万余本もの売上げを記録したが,その後,缶入り商品やペットボトル入り商品の販売比率が高まるにつれて,売上げは減少しているものの,なお,年間9600万本が販売されてきた。
    広報・広告等:リターナブル瓶入りの原告商品を含めた宣伝広告は,いわゆる媒体費用だけでも,平成9年以降年間平均30億円もの金額が投じられ,テレビ,新聞,雑誌等において,リターナブル瓶入りの原告商品の形状が需要者に印象づけられるような態様で,広告が実施されてきた。特に,缶入り商品やペットボトル入り商品の販売が開始され,その販売比率が高まってから後は,リターナブル瓶入りの原告商品の形状を原告の販売に係るコーラ飲料の出所識別表示として機能させるよう,その形状を意識的に広告媒体に放映,掲載等させている。
    立体形状の「商標性」:本願商標と同一の立体的形状の無色容器を示された調査結果において,6割から8割の回答者が,その商品名を「コカ・コーラ」と回答している。
     リターナブル瓶の形状については,相当数の専門家が自他商品識別力を有する典型例として指摘している。
     また,リターナブル瓶入りの原告商品の形状に関連する歴史,エピソード,形状の特異性等を解説した書籍が,数多く出版されてきた。
     リターナブル瓶入りの原告商品の形状は,それ自体が「ブランド・シンボル」として認識されるようになっている。
    他人による使用:本願商標の立体的形状の特徴点を兼ね備えた清涼飲料水の容器を用いた商品で、市場に流通するものは存在しない。また、原告は,第三者が,リターナブル瓶と類似する形状の容器を使用したり,リターナブル瓶の特徴を備えた容器を描いた図柄を使用する事実を発見した際は,直ちに厳格な姿勢で臨み,その使用を中止させてきた。
    小括:以上の事実によれば,リターナブル瓶入りの原告商品は,昭和32年に,我が国での販売が開始されて以来,驚異的な販売実績を残しその形状を変更することなく,長期間にわたり販売が続けられ,その形状の特徴を印象付ける広告宣伝が積み重ねられたため,遅くとも審決時(平成19年2月6日)までには,リターナブル瓶入りの原告商品の立体的形状は,需要者において、他社商品とを区別する指標として認識されるに至ったものと認めるのが相当である。
    立体形状と文字商標との関係:当該形状の長年にわたる一貫した使用の事実,大量の販売実績、多大の宣伝広告等の態様及び事実,当該商品の形状が原告の出所を識別する機能を有しているとの調査結果等によれば、リターナブル瓶の立体的形状について蓄積された自他商品の識別力は,極めて強いというべきである。そうすると,本件において、リターナブル瓶入りの原告商品に「Coca-Cola」などの表示が付されている点が,本願商標に係る形状が自他商品識別機能を獲得していると認める上で障害になるというべきではない(なお、本願商標に係る形状が,商品等の機能を確保するために不可欠な立体的形状のみからなる商標といえないことはいうまでもない。)。
    出願商標と使用商標との同一性:リターナブル瓶入りの原告商品における口部の形状についてリターナブル瓶の立体的形状と本願商標とは、口部において,前者が王冠用であるのに対して、後者がスクリューキャップ用であるという点で相違する。
     口部の形状は,機能に直結する形状であるとともに,ありふれた形状であって,特段の事情のない限り,需要者が商品を識別する対象とはなり得ないというべきであるから,そもそも,本願商標の特徴的な部分ということはできない。また,本件において、特段の事情は存在しない。
     のみならず,前記のとおり,リターナブル瓶入りの原告商品の形状について,当該形状の長年にわたる一貫した使用の事実,大量の販売実績,多大の宣伝広告等の態様及び事実,当該商品の形状が原告の出所を識別する機能を有しているとの調査結果等を総合すると,リターナブル瓶の立体的形状について蓄積された自他商品識別力は,極めて強いというべきであるから,リターナブル瓶入りの原告商品の口部の相違が,本願商標に係る形状が自他商品識別機能を獲得していると認める上で障害となるというべきではない。
    結論:以上のとおり,本願商標については,原告商品におけるリターナブル瓶の使用によって,自他商品識別機能を獲得したものというべきであるから,商標法3条2項により商標登録を受けることができるものと解すべきである。
3.ヤクルト容器
 これも、文字を付して使用されていた、商品の容器の形状について、文字抜きで立体商標として認められた例です。
 平成20年9月の出願で、拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を経て、知財高裁で審決取消訴訟に勝ち、登録を受けることができました。
 マグライトやコカ・コーラと異なり、類似する他人の容器に対し、使用差止め等の措置を取ってこなかったにもかかわらず、周知性等が認められています。
 知財高裁の判断は以下の通りです。
    使用期間:本件容器とほぼ同一形状の容器は,昭和43年に,原告商品の容器がガラス瓶からプラスティック製のワンウェイ容器に変更された際に,著名なデザイナーによってデザインされたものであり,飲みやすさ,持ちやすさ,コンベアー・ラインでのガイドへの適合性,自動包装機への適応性などの機能性が重視されたシンプルな形状ではあったものの,当時,乳酸菌飲料の容器としては斬新な形状であった。本件容器は,昭和43年の販売開始以来40年以上ほとんどその形状を変えることなく,一貫して原告商品に使用されてきた。
    販売実績:原告商品の販売額は,平成12年以降300億円を超えており,特に平成20年には459億円に達している。また,平成10年から平成19年までの間,乳酸菌飲料における原告の市場占有率は常に50%以上であり,原告商品のみでも,業界の約42%以上のシェアを占めている。
    広報・広告等:原告商品の宣伝広告費は,原告商品「ヤクルト」の販売を開始した昭和43年は約9億6000万円であったが,翌年には約20億円に急増し,その後もほぼ年々増加傾向にあって,昭和57年には約50億円平成元年には約76億円平成17年には約95億円に達しており,原告商品には毎年巨額の宣伝広告費用が費やされてきた。
     宣伝広告記事の内容は,本件容器が採用された昭和43年ころから,本件容器の形状の特徴及び利点を強調する宣伝が数多くなされ,その後,原告の宣伝には,ほぼ必ず本件容器の写真若しくは図柄が掲載されており,本件容器があたかも原告のシンボルマークのように扱われて,需要者に強く印象付けられるような態様で宣伝されてきた。
    立体形状の「商標性」:平成20年及び同21年の各アンケート調査の結果によれば,男女480人を対象とした東京及び大阪における会場テストにおいても,また男女5000人を対象としたインターネット調査においても,本願商標と同一の立体形状の無色容器を示された回答者の98%以上が,同容器から「ヤクルト」を想起すると回答している。
    他人による使用:現在,乳酸菌飲料を取り扱う市場においては,本件容器と類似する立体的形状の容器を使用した他社商品が多数販売されており,証拠上確認できるものだけでも本件容器と類似する立体的形状の商品が12種類以上存在しているが,いずれも,原告が昭和43年に本件容器を採用した以降に登場した商品であること,インターネット上の記事によれば,本件容器と酷似する立体的形状の商品に接した需要者は,それらの容器を「ヤクルトとそっくりな容器」,「ヤクルトのそっくりさん」,「ヤクルトもどき」,「この容器はヤクルトを連想する」というように,それらの容器が本件容器の模倣品であるとの意識を持っていることが窺われる。
    原告(出願人)の使用態様

    結論:以上によれば,本件容器を使用した原告商品は,本願商標と同一の乳酸菌飲料であり,また同商品は,昭和43年に販売が開始されて以来,驚異的な販売実績市場占有率とを有し,毎年巨額の宣伝広告費が費やされ,特に,本件容器の立体的形状を需要者に強く印象付ける広告方法が採られ,発売開始以来40年以上も容器の形状を変更することなく販売が継続され,その間,本件容器と類似の形状を有する数多くの乳酸菌飲料が市場に出回っているにもかかわらず,最近のアンケート調査においても,98%以上の需要者が本件容器を見て「ヤクルト」を想起すると回答している点等を総合勘案すれば,平成20年9月3日に出願された本願商標については,審決がなされた平成22年4月12日の時点では,本件容器の立体的形状は,需要者によって原告商品を他社商品との間で識別する指標として認識されていたというべきである。
     そして,原告商品に使用されている本件容器には,前記のとおり,赤色若しくは青色の図柄や原告の著名な商標である「ヤクルト」の文字商標が大きく記載されているが,上記のとおり,平成20年及び同21年の各アンケート調査によれば,本件容器の立体的形状のみを提示された回答者のほとんどが原告商品「ヤクルト」を想起すると回答していること,容器に記載された商品名が明らかに異なるにもかかわらず,本件容器の立体的形状と酷似する商品を「ヤクルトのそっくりさん」と認識している需要者が存在していること等からすれば,本件容器の立体的形状は,本件容器に付された平面商標や図柄と同等あるいはそれ以上に需要者の目に付きやすく,需要者に強い印象を与えるものと認められるから,本件容器の立体的形状はそれ自体独立して自他商品識別力を獲得していると認めるのが相当である。
4.Yチェア
 これまでは、大量生産される商品でしたが、これは、今まで挙げた商品に対しかなり高価で、流通量も少ない「椅子」の形状について、立体商標として認められた例です。
 平成21年8月の出願で、拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判を経て、知財高裁で審決取消訴訟に勝ち、登録を受けることができました。
 なお、出願時の指定商品は「家具」でしたが、減縮補正され「肘掛椅子」となっています。
 知財高裁の判断は以下の通りです。
    使用期間:本願商標の特徴的形状を備えた原告製品(肘掛椅子)は,1950年に発売されて以来,材質や色彩にバリエーションはあるものの,その形状の特徴的部分において変更を加えることなく,継続的に販売されている。
    販売実績:原告製品は,日本国内において,昭和33年ころ紹介され,昭和37年ころから平成元年ころまでの間は,百貨店等が輸入し,販売していたが,平成元年にフーバ・インターナショナルSKデザイン事業部が,翌平成2年からはフーバ・インターナショナル等の出資により設立された原告が,それぞれ輸入代理店となり,原告製品を独占的に輸入し,販売するようになった。原告製品の販売地域は全国に及んでおり,資料等により,判明している限りでも,平成6年7月から平成22年6月までの間に,合計9万7548脚が販売されており,このような販売数量は,食卓椅子の販売数量全体と比較すれば必ずしも多いとはいえないものの,1種類の椅子としては際だって多いといえる(なお,原告製品は,既製品であり,注文を受けてから作る受注品ではない。)。
    広報・広告等:原告製品は,1960年代以降,日本国内においても,雑誌等の記事で紹介され,日本で最も売れている輸入椅子の一つとの評価がされている。また,原告製品は,インテリア用語辞典,インテリアコーディネーター試験問題集等の家具業界関係者向けの書籍や,中学生向けの美術の教科書に掲載されるなどの実績を残している。さらに,原告により相当の費用を掛けて,多数の広告宣伝活動が行われている。原告は,原告製品について,国内有数の家具展示会等に出展したり,自社ショールーム,百貨店等における展示会を開催したりするなど,原告製品の周知性を高めるための活動を継続して行った。こうした継続的な広告宣伝活動等により,原告製品は,一部の家具愛好家に止まらず,広く一般需要者にも知られるものとなっているということができる。
    結論:原告製品は,背もたれ上部の笠木と肘掛け部が一体となった,ほぼ半円形に形成された一本の曲げ木が用いられていること,座面が細い紐類で編み込まれていること,上記笠木兼肘掛け部を,後部で支える「背板」(背もたれ部)は,「Y」字様又は「V」字様の形状からなること,後脚は,座部より更に上方に延伸して,「S」字を長く伸ばしたような形状からなること等,特徴的な形状を有している。
     1950年(日本国内では昭和37年)に販売が開始されて以来,ほぼ同一の形状を維持しており,長期間にわたって,雑誌等の記事で紹介され,広告宣伝等が行われ,多数の商品が販売された。
     その結果,需要者において,本願商標ないし原告製品の形状の特徴の故に,何人の業務に係る商品であるかを,認識,理解することができる状態となったものと認めるのが相当である。
5.エコーネス椅子
 このような判決が積み重ねられた結果、審決取消訴訟まで行かず、拒絶査定不服審判で、立体形状の周知性が認められる例も出てきました。
 平成22年6月の出願で、拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判で周知性を認められ、登録を受けることができました。
    使用期間:本願商標の特徴的形状を備えた請求人製品(肘掛椅子)は、請求人により1980年に発売されて以来、材質や色彩、サイズにバリエーションはあるものの、その形状の特徴的部分において変更を加えることなく、継続的に販売されている。
     請求人製品は、日本国内において、1984年ころ販売が始まり、1993年ころから大手ベッド販売会社シモンズを代理店にして、本格的に販売がなされた。
    販売実績:請求人製品は、全国的に販売されており、北海道・東北地区、関東地区、東京地区、中部地区、関西地区、中国・四国地区、九州・沖縄地区のそれぞれに取り扱い店舗があり、多数の専用売り場、取扱い百貨店を有する。
     また、日本での売上げは、1995年から2009年までの15年で5倍ほどに上がっており、現在、日本では月に1,000脚ほど販売されている。そして、1993年8月から2011年8月まで、計194,944脚が売れている。
     販売額は、2008年25憶1,855万円2009年26憶8,005万円2010年28憶4,818万円であり、販売価格は、32万円から37万円ほどの高価な商品である。
    広報・広告等:請求人製品は、日本国内においても、雑誌等の記事で紹介され、いわゆるパーソナルチェアリクライニングチェアの中では日本のトップシェアである。また、請求人は、請求人製品について、広告宣伝及び自社ショールームにおいて展示するなど、請求人製品の周知性を高めるための活動を継続して行った。こうした継続的な広告宣伝活動等により、請求人製品は、広く一般需要者にも知られるものとなっているということができる。
    結論:上記に挙げた事実等に照らすと、1)背もたれ部と肘掛け部が一体となった、皮革製のゆったりとした構造であること、座面が厚みのあるシートの構造であること、底部及び脚部は、大きな輪形の底部、これの左右からS字状及び逆S字状に曲がった2つの脚部を有する木製の構造であること等、特徴的な形状を有していること、2)1980年に販売が開始(日本国内では昭和59(1984)年ころ)されて以来、ほぼ同一の形状を維持しており、長期間にわたって、雑誌等の記事で紹介され、広告宣伝等が行われ、多数の商品が販売されたこと、3)その結果、需要者において、本願商標ないし請求人製品の形状の特徴の故に、何人の業務に係る商品であるかを、認識、理解することができる状態となったものと認めるのが相当である。
     以上のとおり、本願商標は、使用により、自他商品識別力を獲得したものというべきであるから、商標法第3条第2項により商標登録を受けることができるものである。
6.スーパーカブ
 これも、拒絶査定不服審判で、立体形状の周知性が認められた例です。
 平成23年2月の出願で、拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判で周知性を認められ、登録を受けることができました。
    使用期間:本願商標は、請求人が製造販売する二輪自動車であるスーパーカブ(以下、そのシリーズ商品も含めて「スーパーカブ」という。)の基本デザインであり、スーパーカブは、まったく新しいカテゴリーの二輪車を具体化したものとして、1958年8月に、初代モデルが発売されて以来、モデルチェンジを繰り返し、派生モデルも生じているものの、その基本デザインは、50年以上も変更されていない
    販売実績:スーパーカブの生産台数の累計は、1958年当時の我が国の50ccの二輪自動車の存在台数が30万台弱であった中、登場から約3年後の1961年6月までに100万台を超え、1966年に500万台、1976年に1,000万台、1991年に2,000万台、2000年に3,000万台、2003年に4,000万台、2005年に5,000万台、2008年に6,000万台を超えて、世界最多量産の二輪自動車となっており、その後もその記録を更新し、2012年には、生産累計台数7,600万台以上となっている。
     スーパーカブは、日本全国にある請求人の二輪自動車販売店で販売されており、スーパーカブの販売店は、請求人のウェブサイトから検索することができるところ、当審における職権調査によれば、例えば、東京都に所在する販売店の検索結果は162店舗である。
     また、スーパーカブは、郵便、新聞、牛乳等の配達、蕎麦等の出前、銀行等の営業、警察官、通勤や通学などに用いられるため、幅広い層の需要者に使用されている状況からすれば、実際にスーパーカブを使用している者以外の者においても、本願商標を目にすることは多いものといえる。
    広報・広告等:請求人は、1958年から現在に至るまで、スーパーカブの商品カタログを毎年のように作成、発行するとともに、スーパーカブの広告を新聞、雑誌などの媒体に掲載してきており、これらのカタログや広告には、本願商標が掲載されている。
     また、スーパーカブを単独で特集した書籍や、特集記事を掲載した雑誌なども多数発行されており、それらによれば、スーパーカブは、日本全国どこでも見かけることができ、生活の中に溶け込むように使用され、社会の風景の一部になるほど、身近な存在となっており、いつも視界のなかを走るオートバイであったなどの記載があり、このことから、本願商標は、我が国において、広く一般に知られているといえる。
    他人による使用:インターネット情報等によれば、本願商標の特徴を有する二輪自動車として、ヤマハ発動機株式会社のヤマハメイトシリーズ(以下「ヤマハメイト」という。)又はスズキ株式会社のスズキバーディーシリーズ(以下「スズキバーディー」という。)に関する情報が見受けられる。
     しかしながら、ヤマハメイト及びスズキバーディーは、いずれもスーパーカブの後発商品であり、それらの生産台数がスーパーカブの生産実績と同等といえるほどの情報も見当たらず、また、需要者はヤマハメイト又はスズキバーディーも含めて、本願商標の特徴を有する二輪自動車をスーパーカブと認識するといわれることもあり、さらに、ヤマハメイトは2008年9月に生産終了し、スズキバーディーも既にその一部が生産終了となっている。
     そして、これらのほかに、本願商標の特徴を有する二輪自動車は見当たらない。
    商品形状の商標性:他方、本願商標は、「2008年度 グッドデザイン・ロングライフデザイン賞」及び「2008年度 グッドデザイン・ライフスケープデザイン賞」を受賞し、「2009日本自動車殿堂 歴史車」にも選定登録されている。
    結論:以上からすれば、本願商標は、1958年以降、モデルチェンジを繰り返し、派生モデルも生じているものの、その特徴において変更を加えることなく、本件審決時までの50年以上にわたって、請求人により製造、販売されている二輪自動車であるスーパーカブの立体的形状であり、その生産台数は一貫して極めて多く、日本全国で販売され、幅広い層の需要者に使用されているものである。また、本願商標は、長年にわたり多くの広告や雑誌等において紹介され、そのデザインの継続性から各種デザイン賞にも選定されているものであり、さらに、本願商標と出所の混同を生じるおそれがある他人の二輪自動車は見当たらないものといえる。
     そうとすれば、本願商標は、二輪自動車について使用された結果、請求人を出所とする識別標識として、需要者が認識するに至ったものというのが相当であるから、本願商標は、自他商品識別力を獲得するに至っており、本願の指定商品である二輪自動車の需要者が、本願商標に接するときは、請求人に係る二輪自動車であることを認識することができるものというのが相当である。
     したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するというべきである。
7.立体商標に必要な周知性
 以上のように、商品の形状自体、又は商品の容器の形状が3条2項の適用を受ける民には、かなり高いハードルを越えなければならないことが分かります。
 ただ、十分な周知性を備えていれば、立体商標制度導入当初のように、必ず審決取消訴訟まで争わなければならないような状況とは違い、特許庁の拒絶査定不服審判で、審査の判断を覆すことができるようになってきたとも言えます。
 一方で、権利を取得したとしても、第三者が同一又は類似の商品形状や包装の形状を使用したとして、それが「商標的態様の使用」に該当するのでしょうか。
 十分な周知性がなければ、識別力という商標の機能を発揮せず、すると他人の商標権を侵害しない、ということも考えられます。
 意匠のように、同一又は類似の場合に果たして権利行使ができるのか、まだ裁判例がないので断言はできませんが、興味のあるところです。
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