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お知らせ

2015-06-08
■ 先行ビジネスの模倣について(1)−知的財産権は及ぶのか−

1.事件
 鳥貴族:「まねするな!」鳥二郎を提訴…「看板など酷似」
 毎日新聞 2015年04月21日 11時16分(最終更新 04月21日 12時30分)より
 鶏をかたどった「鳥」の文字など店名のデザインや店の内装をまねしたとして、大手焼き鳥店チェーン「鳥貴族」(本社・大阪市浪速区)が、焼き鳥店「鳥二郎」を営む会社を相手取り、デザインの使用差し止めや6050万円の賠償を求める訴えを大阪地裁に起こした。21日の第1回口頭弁論で被告側は請求の棄却を求めた。
 被告は京都市中京区の「秀(ひで)インターワン」。同社のホームページによると、大阪や京都で「鳥二郎」を12店営んでいる。
 訴状によると、鳥貴族は1985年に東大阪市で第1号店をオープン。赤い文字で店名を表記する独自のデザインを採用し、「鳥」の文字は鶏のくちばしや足をイメージした。今年1月末までに全国387店を展開、このデザインの看板が店の目印になっている。
 昨年4月から営業を始めた「鳥二郎」は、看板のデザインが酷似しているうえ、(1)店名横の「ジャンボ焼鳥」は「じゃんぼ焼鳥」(鳥貴族)と同じ(2)生ビールのメニュー表記は「うぬぼれ生」(鳥貴族)を連想させる「プライド生」(3)木材を使った内装や店員の服装が黒色Tシャツ??など、客に鳥貴族を連想させる店作りだと訴える。
 さらに、大阪市北区曽根崎2などの4店は鳥貴族がもともと出店していたビルに入居して看板が並んでおり、「鳥貴族目当ての客を誘導して悪質だ」と批判している。
 鳥貴族は280円(税抜き)均一のメニューで知られるが、鳥二郎は全品270円(同)を宣伝している。
 鳥二郎側は店名のデザインについて「くちばしや頭などを完全に図形化しており、鳥貴族の表示と明確に異なる」と反論。営業形態の相似点も飲食業界では珍しくなく、「鳥貴族の形態を取り入れようとする意思は否定しないが、客をだます悪意はない」と主張している。
 鳥貴族は低価格を売り物に急成長し、昨年7月にはジャスダックに上場した。2014年7月期の売り上げは約146億円。【服部陽】
2.商標
 まず、商標法から見てみましょう。
 それぞれの保有する登録商標は、(1)、(2)の通りです。
(1) 鳥貴族(株式会社鳥貴族)
 @登録4074620 出願日1995年8月3日 登録日1997年10月24日
   【指定役務】42類  焼鳥料理その他鳥料理の提供等
  (平成3年法→平成23年法では43類 類似群42B01)
 A登録5277417 出願日2009年4月9日 登録日2009年10月30日
   【指定商品】33類 日本酒等            【標準文字】
 B登録5624161 出願日2013年3月15日 登録日2013年10月18日
   【指定商品】29類 串焼きした鳥肉等
   【指定役務】35類 鳥料理店等の運営等に関するコンサルティング等
 C登録5671750 出願日2013年11月8日 登録日2014年5月23日
   【指定商品】33類 日本酒等 
 D登録5728074 出願日2014年5月23日 登録日2014年12月19日
   【指定商品】9類 電子計算機用プログラム等
   【指定商品】30類 食品香料等
   【指定商品】32類 ビール等
   【指定役務】41類  インターネット等を利用した画像等の提供
   【指定役務】42類  電子計算機用プログラムの提供等
 E商願2015-2577 出願日2015年1月14日
   【指定商品】9類 電子計算機用プログラム等
   【指定商品】29類 串焼きした鳥肉等
   【指定商品】30類 食品香料等
   【指定商品】32類 ビール等
   【指定商品】33類 日本酒等
   【指定役務】35類 鳥料理店等の運営等に関するコンサルティング等
   【指定役務】41類  インターネット等を利用した画像等の提供
   【指定役務】42類  電子計算機用プログラムの提供等
   【指定役務】43類  飲食物の提供等
(2) 鳥二郎(株式会社秀インターワン)
 @登録5698660 出願日2014年5月14日 登録日2014年8月29日
   【指定役務】43類  飲食物の提供
(3) 登録異議申立 2014-900320 (平26.11.21)
 上記(2)の商標登録に対しては、株式会社鳥貴族から、登録異議申立てがなされています。
 登録異議申立てとは、商標登録に対する信頼を高めるという公益的な目的を達成するために、登録異議の申立てがあった場合に特許庁が自ら登録処分の適否を審理し、瑕疵ある場合にはその是正を図る制度で、審査の延長線上に位置づけられます。
 商標法4条1項11号(先行登録商標と類似し、類似の指定役務に使用)、同15号(他人の役務との混同)、同19号(不正の目的での周知商標と類似)等が理由に挙げられているのではないかと思います。
 ちなみに審査に際しては、拒絶理由は通知されませんでした。
 一度登録査定を受けている、ということは、審査時には特許庁は、上記の拒絶理由を認めなかったということですが、異議申立ての審理ではどのように判断されるでしょうか。
(4) 裁判の争点への当てはめ
 原告は「看板のデザインが酷似」と主張していますので、11号が認められれば、商標権の侵害も認められる可能性が高くなりますが、15号、19号では、登録が認められないだけで、直ちに侵害に結び付くわけではありません。
 民法709条の不法行為を視野に入れて、損害の発生を立証することになるのではないでしょうか。
3.不正競争防止法
 次に、不正競争防止法を検討してみましょう。
 商標法のように、事前の出願・登録を必要とせず、事件が起きてから、法律に触れていたかどうかを判断します。
(1) 不正競争行為の定義(法上の規定)
 第2条  この法律において「不正競争」とは、次に掲げるものをいう。
 一  他人の商品等表示(人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するものをいう。以下同じ。)として需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供して、他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為(周知表示混同惹起行為)
 二  自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示と同一若しくは類似のものを使用し、又はその商品等表示を使用した商品を譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、若しくは電気通信回線を通じて提供する行為(著名表示冒用行為)
(2) 裁判の争点との当てはめ
 上記の記事による提訴内容が条文に当てはまるかどうか、問題をせいりしてみます。
 検討してみましょう。
 @ 「 ジャンボ焼鳥」、「じゃんぼ焼鳥」は、商品等表示に該当し、混同を惹起するか?
 A 「うぬぼれ生」、「プライド生」は、商品等表示に該当し、混同を惹起するか?
 B 木材を使った内装、店員の黒色Tシャツはそもそも「商品等表示」か?
 C もともと出店していたビルに入居して看板が並んでしまったのは「混同惹起行為」か?
 D 「均一」のメニューはそもそも「商品等表示」か?
 では、検討してみましょう。
 @ 「ジャンボ焼鳥」、「じゃんぼ焼鳥」
  「ジャンボ焼鳥」、「じゃんぼ焼鳥」は、商品等表示には該当すると思われます。そこで、混同を惹起するか、が問題となります。
  「じゃんぼ焼鳥」を食べログで検索すると、鳥貴族のみヒットします。一方「ジャンボ焼鳥」は242件がヒットします。
 そもそも「ジャンボ焼き鳥」は、「やきとり」が大きい(ジャンボ)という、商品の特性についての記述的な表現ですので、 「じゃんぼ焼鳥」だけが特別に著名でない限り、「他人の商品又は営業と混同を生じさせる」と判断するのは難しいのではないでしょうか。
 また、商標法で、一私人に独占させるのが適切でないと考えられているものなので、不正競争防止法で独占性を認めさせるのも困難ではないかと思います。
 A 「うぬぼれ生」、「プライド生」の「混同惹起性」
 「うぬぼれ生」、「プライド生」ともに、上記の「記述的」表現には該当しないと思いますが、「うぬぼれ生」と「プライド生」との間に出所の混同が生じるかどうか、判断の難しいところです。
 B 木材を使った内装、店員の黒色Tシャツ
  木材を使った内装、店員の黒色Tシャツの「商品等表示性」について調べてみましたが、制服についての裁判例は発見できませんでした。
  内装等については、以下の裁判例があります。
 大阪地裁平成1 9 年7月3日判決(平成1 8 年(ワ) 第1 0 4 7 0号)。
 控訴審は、大阪高裁平成1 9 年1 2月4日判決(平成1 9 年(ネ)第2 2 6 1号)。
@)原審における原告の主張
 CA 特に玉子焼きについてのみ,オーダーが来てから焼くコーナーを設け,それを名物あるいはお奨めと表記していること
 CB 内装は大部分が木の色で統一され,暖色系の照明が使われ,テーブルや陳列台の高さも,顧客が居心地よく利用できるよう,心理工学的に配慮がされていて,全体的に「人の温もりを感じさせる,下町の大衆食堂」としてのコンセプトが貫かれた印象を抱かせること
A)原審の判断
 原告は,その他店舗の内装の共通点として,@被告店舗においても,原告店舗と同様,玉子焼きについてのみオーダーを受けてから焼くコーナーが設けられており,また,A暖色系の照明が用いられている点を挙げる。しかし,被告の@のような営業形態は,役務提供の方法そのものであって,かかる営業形態について原告に独占権を認めることはできず,しかも,そのような営業形態自体とくに目新しいものということはできない。また,Aの点についても,飲食店において暖色系の照明を用いることは,店構えとしてきわめてありふれたことである。したがって,上記各点を捉えて原告店舗外観と被告店舗外観との類似性を基礎づける事情とすることはできない。
B)控訴審の判断
 棄却。
 控訴人は,店舗デザインについての米国法下でのトレードドレスの保護法理を参考にすれば,控訴人店舗外観が営業表示にあたるなどとも主張するところ,同法理を日本法下において直ちに採用ないし斟酌することの適否はともかくとして,本件における店舗外観において最も特徴がありかつ主要な構成要素というべき部分とその相違の程度からすれば,被控訴人店舗外観が控訴人店舗外観全体に類似するとすることはできない。
木材を使った内装について、商品等表示との認定を受けるためのハードルは高いように思われます。
 C もともと出店していたビルに入居して看板が並ぶ
 鳥貴族が元から出店していたビルに鳥二郎が後から入居して、その結果看板が並んでしまった場合、看板が類似ならば、混同惹起行為の可能性はあります。
 もっとも、看板自体が類似であれば、同じビルで看板が並んでいなくても、混同惹起行為になりますが。
 また、看板に書かれた商標が類似と判断されれば、商標法で処理が可能です。
 D 「均一」のメニュー
 「均一」のメニューは、この2点に限らず、居酒屋では一般的な営業スタイルだと思います。「均一」を食べログで検索すると、14647件ヒットしました。
 この2店の間でだけ、著しく「混同を生じる」ことがあるかどうか。
 難しいところです。
4.一般不法行為(民法709条)
 最後に、民法709条の一般不法行為を検討してみましょう。
 知的財産権侵害訴訟では、知的財産権侵害(主位的請求)が成立しない場合に備えて、一般不法行為法(民法709条)に基づく損害賠償を予備的に請求する実務が、著作権侵害を中心に、定着しています。
 裁判例としては、一般不法行為法に基づいた損害賠償請求を否定するものが大半ですが、それを認容するものも少数ながら存在し、近年、より容易に認容する判決の増加傾向が見られました。
 しかし、最近では、やはり主位的請求が成り立たない場合には、一般不法行為法に基づいた損害賠償も認められにくくなっています。
 ビジネスの「やり方」を今の日本の知的財産権法ですべて保護するためには、前項の裁判例で言及された「トレードドレス」の概念を導入する必要があるのかもしれません。
 一般不法行為や、トレードドレスについては、稿を改めて触れようと思います。
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