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お知らせ

2014-11-06
■ 農産品等及び加工品の「地理的表示」の保護−特にぶどう酒にフォーカスして−

1.「地理的表示」とは
 知的財産としての「地理的表示」は、地域ブランド化等を通した農林漁村活性化、消費者の選択に資する地域ブランド産品についての情報提供、わが国の地城ブランド産品の輸出促進及び海外における模倣産品の流通の防止等の観点から、近年その保護のあり方が議論されています。
 「地理的表示」に関しては、各種法令(条約、外国法、国内法)において、「地理的表示」、「原産地表示」、「原産地名称」、「原産地呼称」等、様々な名称で呼称されていると共に、それぞれについて、微妙に異なる定義がなされていますが、本稿では、
(1) 製品の原産地を表示すると同時に、
(2) 原産地に依存する製品の品質や特徴等の特性及び
(3) 原産地と特性との結びつき(製品と土地の聞に存在するつながり)を特定」する「表示」として、『地理的表示』という記述を用いることにします。
2.「地理的表示」の分類
 「地理的表示」について、便宜上、構成態様、識別力による分類を試みました。
(1) 構成態様による分類
 特別顕著性を有しない「記述的」な表示(商標法第3条1項3号又は6号に該当)としては、
 @ 「地理的名称+産品名」からなる表示(例:地域団体商標のほとんど)
 A 地理的名称のみからなる表示(例:ボルドー、ブルゴーニュ、パルミジャーノ・レッジャーノ等)
 B 地理的名称・産品名を含まない表示(例:ボンヌ・マール(AOCワイン)、いぶりがっこ等)が挙げられます。
 また、特別顕著性を有する表示としては、
 C ロゴ化、図形との結合等の構成態様を有する表示が挙げられます。
(2) 識別力(特定の営業主体又は地域に対する)による分類
 @ 生産地等と地理的名称との関連を(ほとんど)想起させない表示(普通名称化した表示)(例:ボストンバッグ、ロンドンブーツ、天津甘栗、カマンベールチーズ等)。
 A セカンダリーミーニングを獲得(商標法第3条2項)した表示、すなわち特定の営業主体、地域について識別力を獲得した表示(例:Amazon.com、GEORGIA、堂島ロール等)。
 B 地理的原産地に起因する特有の特性を有する産品との関適で、特定地域に対する識別力を獲得した表示(例:ダージリン・ティー、神戸牛、鹿児島黒酢、鳥取砂丘らっきょう等)。
 C ロゴ化、図形との結合等により識別力を獲得した表示。
3.「地理的表示」の保護の必要性
 「地理的表示」は、市場において価値あるブランド名として機能するようになり、消費者に、出所(地理的原産地)及び品質を知らせる機能を果たすようになっています。
 原産地の地理的特性に由来する優れた品質を有する伝統的産品は消費者に好まれることから(生産地表示が一種の心理的信仰に結びついているような例:大間まぐろ)、他の産地の製品よりも高い価格で販売できるようになります。
 そのため、農山漁村地域の振興や地域ブランド創出の観点から、近年「地理的表示」が注目を集めていると共に、無関係な第三者による信用へのただ乗り行為については、消費者を欺瞞する不正競争行為であることから、法による保護が必要とされています。
4.ぶどう酒の保護の基準についての考察
(1) TRIPs協定
 現在、地理的表示の保護についての国際的基準となっているのは、TRIPs協定です。
 これは、1994年4月に作成され、翌年1月に発効した「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定」の略称です。
 GATTのウルグアイ・ラウンドが発展的に解消して、1995年にWTOが設立された際の主要な付属議定書の1つで、物品及びサービスの貿易に関する協定と並ぶ知的財産権の貿易関連の協定です。
 国際貿易、投資の促進、円滑化のためには知的財産権の保護が不可欠との認識から定められた、知的財産権保護の国際的ミニマムスタンダードで、パリ条約、ベルヌ条約などの国際条約に関係なく、WTO加盟国は、内国民待遇、最恵国待遇を原則に、知的財産権保護のための国内法整備が必要とされています。
(2) 地理的表示の保護
 @ 定義(22条1項)
 地理的表示、とは以下のように定義されています。
 「ある商品に関し、その確立した品質、社会的評価その他の特性が当該商品の地理的原産地に主として帰せられる場合において、当該商品が加盟国の領域又はその領域内の地域若しくは地方を原産地とするものであることを特定する表示」
 どこが産地である、ということが、品質評価に結び付いている、ということです。
 A 地理的表示の保護(22条2項、3項)
 WTO加盟国には、以下の行為を防止するための法的手段を確保することが義務付けられています。
a) 商品の特定又は提示において、当該商品の地理的原産地について公衆を誤認させるような方法で、当該商品が真正の原産地以外の地理的区域を原産地とするものであることを表示し又は示唆する手段の使用
b) 1967年のパリ条約第10条の2に規定する不正競争行為を構成する使用
 また、商標登録出願においては以下のようなものを拒絶し、登録されていた場合には無効とするよう義務付けられています。
 地理的表示を含むか又は地理的表示から構成される商標の登録であって,当該地理的表示に係る領域を原産地としない商品についてのもの
 例えば、長崎で生産したハムについて「パルマハム」と表示することはできません。
 ただし、「長崎産パルマハム」や「パルマ風ハム」ならばOKです。
 B ぶどう酒及び蒸留酒の地理的表示の追加的保護(23条)
 一般の商品は、以上のような保護だけなのですが、ぶどう酒及び蒸留酒については、さらに以下の厳しい規定を設けることが義務付けられています。
a) 真正の原産地が表示される場合又は地理的表示が翻訳された上で使用される場合若しくは「種類(kind)」、「型(type)」、「様式(style)」、「模造品(imitation)」等の表現を伴う場合においても、ぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示が当該地理的表示によって表示されている場所を原産地としないぶどう酒又は蒸留酒に使用されることを防止するための法的手段を確保する
 つまり、「山梨産ボルドーワイン」や「ボルドー風ワイン」でもNGです。
 また、商標登録出願においては以下のようなものを拒絶し、登録されていた場合には無効とするよう義務付けられています。
 a)のぶどう酒又は蒸留酒を特定する地理的表示を含むか又は特定する地理的表示から構成される商標の登録であって,当該a)のぶどう酒又は蒸留酒と原産地を異にするぶどう酒又は蒸留酒についてのもの
(3) ぶどう酒への「思い」
 なぜぶどう酒(及び蒸留酒)について、他の商品よりも厳しい基準が設けられているのでしょうか。
 そのことについて、知的財産法関係の記述で、理由を述べたものを、私は知りません。
 そこで、これからは想像、推測の話となります。
 ぶどう酒の味の決め手としては、以下の3つが挙げられます。
 @ セパージュ:ぶどうの品種
 A アペラシオン:ぶどう酒の生産地
 B テロワール:ぶどう畑の土壌、地形、気候、風土など、ぶどうの生育環境
 @は、一見地理的表示と関係なさそうですが、その土地で育ったぶどうでぶどう酒を作るわけですから、実は品種も土地と結びついているのです。
ブルゴーニュの場合、赤はピノ・ノワール、白はシャルドネで作ると決められていますし、イタリアはトスカーナ州のキャンティも、サンジョヴェーゼを75%以上使用しなければならないなど、ぶどうの品種と土地は切っても切れないのです。
 Aは当然のことですが、生産地を聞けば、ぶどう酒の一般的傾向がわかるので、地理的表示と品質は、密接に結びついています。
 Bはちょっと複雑なのですが、一言で翻訳できる日本語が存在していません。
 上記のような、ぶどうの生育環境を総合したもので、さまざまな要素が絡み合っています。
 しかし、それもすべて土地と結びついています。
 このようなこだわりが、他の商品に対して、より厳しい保護を設けることについて、「いちいち理由を挙げる必要もなく」当然に決まっていった、と考えるのは、ロマンチックに過ぎるでしょうか。
 最近では、「テネシーウィスキー」の定義について、ジャックダニエル規準を法律で追認する形になったことから、他のテネシーウィスキー業者が、独禁法違反で無効である、と主張しています。
 スコッチウィスキーの中でも、特にシングルモルトについては、まさしく土地と切っても切れません。
 ところで、昨年産のウィスキー世界一の称号は、日本の「山崎シングルモルト・シェリーカスク2013」が勝ち取りました。
 日本のぶどう酒が、世界的評価を得る日はやってくるのでしょうか。
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