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お知らせ

2014-10-10
■ 知的財産高等裁判所−出願戦略との関係−

1.「知財高裁」を知っていますか。
 日本には8つの高等裁判所があります。
 普通の民事裁判は、まず地方裁判所に提起して、その判決に不服の場合は、管轄の高等裁判所に上告することになります。
 例えば、1審が盛岡地裁の場合、2審は仙台高裁、1審が佐賀地裁の場合は、2審は福岡高裁になります。
 しかし、案件が知的財産に係る場合は、2審は大半が、知的財産高等裁判所の取り扱いとなります。
 知財高裁は、東京高等裁判所の中に設けられています。
 設置のきっかけのひとつは、2001年6月に司法制度改革審議会に、「知的財産権関係事件への総合的な対応強化」についての意見が公表されたことです。
 もうひとつは、2002年3月に、知的財産戦略会議が発足し,同年7月に「知的財産戦略大綱」が決定され、「知的財産立国」の下に、実質的な「特許裁判所」機能の創出などの課題が提示されたことです。
 これを受けて、2003年3月には、知的財産基本法が施行され、内閣に知的財産戦略本部が設置されました。
 この知的財産戦略本部が同年7月に決定した知的財産の創造、保護及び活用に関する推進計画において、知的財産高等裁判所の創設を図るべきことが課題として掲げられました。
 紛争処理機能の強化及び内外に対する知的財産権重視 という国家政策を明確にするためです。
 これらを受けて、2004年6月に知的財産高等裁判所設置法が制定され、2005年4月1日、知的財産高等裁判所が東京高等裁判所に設置されました。
2.知財を扱う裁判所機構の沿革
 知財高裁の母胎となった東京高等裁判所「知的財産部」は、1948年の特許法改正で東京高裁を専属管轄とする審決取消訴訟制度が定められたのを契機として、1950年11月に創設された、審決取消訴訟事件と知的財産権関係控訴事件を集中的に取り扱う第5特別部から始まりました。
 その後、第5特別部ではなく民事通常部の中に知的財産権関係事件を専門に取り扱う部を置くようになります。
 まず、1958年3月に第6民事部、1959年12月に第13民事部、1985年1月に第18民事部、2002年4月に第3民事部が、それぞれ知的財産権関係事件の専門部になりました。
 これらの専門部の正式名称は「民事部」でしたが、2004年4月1日からは、「知的財産部」の第1部〜第4部と名称変更されました。
 また、同日から、特許権等に関する訴えについて5人の裁判官による大合議制が導入されたことに伴い、知的財産大合議部としての「第6特別部」が創設されました。
 この知的財産第1部〜第4部と「第6特別部」が、2005年4月1日の知財高裁の設立に伴い、それぞれ知財高裁の通常部(第1部〜第4部)と特別部(大合議部)に移行したのです。
 現在、知的財産権関係事件を取り扱う専門部は、東京地方裁判所に4か部、大阪地方裁判所に2か部あります。
 また、大阪高等裁判所にも集中部が1か部あります。
3.知財高裁は何を取り扱うか
 上記の通り、「知的財産部」は、審決取消訴訟制度の設立を契機として誕生しました。
 審決取消訴訟とは、拒絶査定不服審判や特許無効審判などの審決に不服がある場合に提起される裁判です。
 本来、行政庁の行政処分に不服がある場合には、行政事件訴訟法により、地方裁判所に訴訟を提起することになっています。
 しかし、特許庁の審決や、商標登録異議申立に係る決定に不服がある場合、裁判管轄は、いきなり高等裁判所になります。
 特許庁での審判手続が裁判に類似した準司法的手続によって厳正に行われる以上、さらに3審級(地方裁判所から最高裁判所まで)を重ねることはいたずらに事件の解決を遅延せしめるという事情と、事件の内容がきわめて専門技術的であるため、特許関係の専門家によって行われた審判手続を尊重してよいという事情とによって、一審級を省略して直接に東京高裁に出訴することとしたものです。
 簡潔にいうと、訴訟経済、及び専門官庁たる特許庁の審判を尊重し、一審級を省略するという趣旨です。
 公正取引委員会の審決、高等海難審判庁の裁決についても、同様の理由から東京高裁の専属管轄になっています。
 拒絶査定不服審判は、出願人が、審査官が下した「拒絶査定」という「行政処分」について請求する審判で、審判官の合議体が、裁判官的役割で、審査官の判断とそれに不服な出願人の判断のどちらが正しいかを審理します。
 他人の特許に無効理由があることを主張する特許無効審判などについては、民事裁判と同様の当事者対立構造で審理され、審判官の合議体が裁判官の役割を果たします。
 この結果である「審決」という行政処分に、行政事件訴訟法の手続きでさらに3審制で審理するのは、屋上屋を架すことになります。
 特許権などの侵害訴訟の1審は、民事訴訟法の規定通り、被告の普通裁判籍の所在地を管轄する裁判所の管轄に属します。
 原告、被告のいずれかまたは両方が1審の判決に不服で控訴する場合に、特許権、実用新案権、半導体集積回路の回路配置利用権及びプログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴えの控訴事件は、東京高裁の専属管轄に属し、知財高裁で取り扱います。
 そのため、これらの事件については、全国の事件が知的財産高等裁判所に集中されていることになります。
 民事控訴事件のうち、意匠権、商標権、プログラムの著作物以外の著作者の権利、出版権、著作隣接権、育成者権、不正競争による営業上の利益の侵害に係る訴えの控訴事件については、1審の地方裁判所に対応した高等裁判所が管轄を有しますので、そのうち、東京高裁の管轄に属する事件を知財高裁が取り扱います。
4.知財高裁の判決
 「審決取消訴訟」は、特許庁を被告として、出願人が提起する訴訟です。
 審決取消訴訟が提起される、ということは、その前に請求された審判の結果である審決に、民間人が不服を申し立てた、ということです。
 つまり、審決取消訴訟で争われるのは、特許庁の判断の是非です。
 するとどういうことが起こるでしょうか。
 特許庁としては、審決取消訴訟で特許庁が「敗訴」するような判決は避けなければなりません。
 まず、拒絶査定不服審判への特許庁の判断がやたらと裁判でひっくり返るようになると、拒絶審決を受けても納得せず、訴訟を提起する出願人が増え、特許庁の負担が増大するからです。
 無効審判は当事者対立構造だから無関係、というわけにもいきません。
 既に特許権などを持っているのに、やたらと裁判で無効にされるのであれば、権利の法的安定性が揺らぎ、手間と費用をかけて特許庁に出願しても無駄だということになり、出願が減ってしまいます。
 そこで、審査官の査定や、審判官の審決、及び一部の「決定」は、知財高裁の裁判例を参考にし、それに影響を受けるようになります。
 つまり、判決のトレンドが、査定・審決のトレンドに影響を与えることになります。
 そこで、発明の「進歩性」の判断や、商標の「類似」の判断などは、審決取消訴訟のみならず、侵害事件の控訴審の判決の傾向の変化に少し遅れて、変化していくことになります。
 事件が最高裁まで上がった場合、その判例(或いは上告棄却決定)は、ほぼ「法律」と同じ効力を持つといっても過言ではありません。
 実際、最高裁判例に基づいて、特許法などが改正されることも多いです。
5.弁理士の対応
 注目を集める知財高裁判決や、最高裁の判決・決定は新聞等でも報道されますが、記事に掲載される部分だけを読んでいても、必ずしも審査・審判に影響を与えるような判決のポイントが書かれているとは限りません。
 世間一般が関心を持つ部分と、特許庁に影響を与える部が同じだとは限らないのです。
 現在は、判決は最高裁判所にサイトで、全文を閲覧することができます。
 審判の審決は、特許電子図書館で閲覧することができます。
 そこで、我々弁理士は、裁判例のトレンドと、審決のトレンドの変化との関係を研究することになります。
 お客様から依頼された出願の内容によって、どのように取り扱われるかを予想して、出願戦略を立てるのです。
 上記の「発明の進歩性」や「商標の類似」には、もちろん原則があり、弁理士になる際にその基本原則はみっちり勉強するのですが、実務になると、原則一辺倒というわけにはいきません。
 さりとて、最近のトレンドばかりに目を奪われていると、将来的なリスクを抱え込むことにもなりかねません。
 「公式(原則)」に「事例」を代入すると、計算すれば「正解」が出てくるわけではないのです。
 トレンドは変化することがありからです。
 以前勤めていた会社で、常々「人が代わればパラダイムが変わるんだぞ」と私に指導してくれた先輩がいましたが、知財高裁といえど例外ではないと思います。
 また、交代でなくても、本人が考え方を変える場合だってあります。
 一人の知財高裁所長の間に、進歩性のハードルがかなり変化したこともありました。
 先般、知財高裁所長が代わりました。
 今後のトレンドを注意深く観察し、お客様の最大利益を図っていきたいと思います。
 なお、2021年に中目黒に新庁舎を建設し、そこに東京地裁から知的財産権部や商事部(株主代表訴訟や会社更生手続きなど)、破産部など、高等裁判所からは知財高裁などを移転させる計画が発表されました。
 ビジネスに関連した訴訟を専門的に扱うことになるようです。
 常々、知財にとどまらない広範なビジネス知識を身につけるように心がけていますが、さらに知財をビジネスに結び付けるお手伝いができるように、努力していきます。
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朝陽特許事務所(ちょうよう)−東京都中央区にある特許事務所。

■ 当事務所は、社内に独立した知財部門を設けることが難しい中小企業向けの特許事務所です。

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