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お知らせ

2014-09-17
■ 職務発明−特許法改正のポイント−

1.職務発明とは
 いわゆる職務発明とは、以下のようなものをいいます。
(1) 従業者等がした発明であり、
(2) その発明が、その性質上、使用者等の業務範囲に属し、
(3) その発明をするに至った行為が、その使用者等における従業者等の現在又は過去の職務に属する
 という3つの条件を満たさなければなりません。
 (1)だけでは、職務発明とは認められません。
 社員の発明であれば、すべて職務発明になるわけではないのです。
 職務発明であれば、使用者等は、たとえその発明の「特許を受ける権利」を、発明者である従業者等から譲り受けなくても、その発明が特許を受けた時は、その発明について通常実施権を有します。
 通常、職務発明については、従業者等が使用者等に権利を承継させる契約や勤務規則等が設けられていますが、職務発明でない発明については、そのような契約等は無効となります。
 現在の日本の特許法では、「特許を受ける権利」は原始的には発明者(個人)に帰属するものとされていますが、この点について、改正が行われようとしています。
2.改正の概要
 今まで、発明者個人に帰属するものとされていた「特許を受ける権利」を、始めから使用者等のものであることにしようというものです。
 これは、発明から使用者等(主に企業)が得た利益について、発明者に後から高額の利益配分を行うような判決が相次ぎ、そのような傾向が続けば、新製品開発による利益が十分に企業に還元されないことから、産業界から出ていた改正への要望に応えるものです。
 この点について、報道はどちらかといえば、否定的な考え方を示しているように思われます。
 曰く、十分な待遇を与えないと、発明者の意欲が減退する。
 曰く、その結果、技術者が海外流出する。
 しかし、このような意見には、2つの視点が欠けているように思われます。
(1) 企業で研究開発を行う技術者は「金のため」に発明をしているのでしょうか。
(2) 発明自体がいいものならば、それだけで企業は利益を上げられるのでしょうか。
3.職務著作との比較
 その報道をしている、報道機関に属する人たちに関しては、著作権法上以下の規定が適用されます。
(1) 法人等の発意に基づき、
(2) その法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物であって、
(3) その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、
原則としてその法人等とすることになっています。
 しかし、例えば新聞記者が、自分の書いた記事の著作権が自分のものにならないからといって、記事を書く意欲が減退したという話は、聞いたことがありません。
 開発者のモティベーションを上げるには、研究するための環境が整っていることが一番なのではないでしょうか。
 適切な給与は必要ですが、売れる発明を作ってたくさん報奨金をもらえることよりも、試験のための機材や、試料について十分な予算があり、協力して研究するスタッフが優秀で、バックアップ体制が整っていることの方が、よほど開発者のモティベーションは上がると思います。
 ごく幸運な例外を除き、現在の発明は、チームによって行われます。
 そのマネジメントがきちんと行われている方が、よほど大事です。
 例えば、チームのリーダーが手柄を一人で持っていってしまうようでは、他のスタッフはやる気をなくし、十分な成果が上がらないのではないでしょうか。
4.「売る」とはどういうことか
 発明とは、「自然法則を利用した技術的思想」という抽象的なものです。
 発明自体はできても、それを製品化するのは、また別の作業が必要です。
 製品のデザイン、部品の設計、材料の選択などはもちろん、原価計算、サプライチェーンの構築、生産計画、在庫管理、流通・販売、広告宣伝など、さまざまな物が絡み合って、ものは売れるのです。
 もし「いいもの」であれば売れるのであっても、抽象的な「発明」をいい「もの(製品)」として完成させる、しかもそれを大量生産することを可能とするだけでも大変なことなのです。
 発明者が、自分で会社を立ち上げて、製造設備をそろえ、原材料を調達し、人員を採用・雇用し、販路を開拓する等のすべてを担ったのであれば、果実を総取りしてもよいでしょう。
 しかし、研究者は、身分と給与を保証され、設備や予算を与えられ、しかも製造販売などは工程下流に任せています。
 企業の研究者の大半はそれがわかっていますので、発明をしただけで、大金を手に入れようなどいうことは、ほとんど考えていないと言っても過言ではないと思います。
 新聞記者だって、給与と身分を保障され、取材経費を会社が負担していることや、自らの属するメディアの「ブランド力」によって、取材活動のかなりの部分を支えてもらっていることがわかっているから、記事の著作者が新聞社であることに疑問を抱かないのではなでしょうか。
5.名誉の問題
 ただし、すべて先程挙げた著作権のようにしてしまってもよいかどうかというと、別な問題があります。
発明者名誉権です。
 著作権法では、職務著作の「著作者」が「法人等」になる、と規定しています。
 しかし、職務発明の「発明者」を「使用者等」にしてしまってよいでしょうか。
 特許出願の際に、願書には【発明者】の欄の記入が義務付けられています。
 たとえ職務発明の「特許を受ける権利」が企業のものになるとしても、発明者がだれであるのかは明確にして、特許証にも記載されるようにしておかないと、モティベーションの低下が起こるかもしれません。
 いずれにせよ、モティベーションの低下や海外流出を防ぎたいなら、発明の対価をインセンティブとするより、研究環境を充実させる方が得策だと思います。
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