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お知らせ

2014-08-07
■ 部分意匠−その効力と活用法−

1.部分意匠の立法趣旨
 いわゆる部分意匠とは、「物品の部分」の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます。
 物品が、その本来的な機能を発揮できる状態にする際に必要とされる操作に使用される画面デザインについても、部分意匠に含まれます。
 意匠法の保護対象である意匠は、物品の形態であって、視覚を通じて美感を起こさせるもの、と定義されていますが、「物品」は独立して取引の対象となるものと解されていたので、平成10年意匠法改正前においては、それ自体独立して取引の対象となり得ない「物品の部分」に係る意匠は保護されていませんでした。
 しかし、一つの意匠に独創的で特徴のある部分が複数創作された場合、それらの一部分が模倣されていても、意匠全体として非類似であれば意匠権の効力は及びませんでした。
 このため,近年のデザイン開発が、創作の重点を物品の部分に移行して集中的な投資を行う傾向にありながら、その投資の十分な回収が困難となっていました。
 そこで、平成10年の意匠法改正により、物品の部分に係る独創的で特徴のある創作にも意匠権の効力を及ぼし、当該部分の模倣を効果的に防止すべく、部分意匠を保護することとしました。
 また、昨今の情報技術の発展に伴い登場してきた画面デザインについては、当該物品の使用目的実現に必須であるものであっても、意匠法上は保護されず、画面デザインを当該物品の一部として創作し、その創作に投資をしている企業等による製品開発の実情と合致しないものとなっており、こうした画面デザインについて、意匠権を取得することを可能とし、模倣被害を防止することが必要となってきました。
 そこで、平成18年意匠法改正により、物品がその本来的な機能を発揮できる状態にする際に必要とされる操作に使用される画面デザインについて、部分意匠に含まれるものとして保護するものとし、また、当該画面デザインがその物品の表示部に表示されている場合だけでなく、同時に使用される別の物品の表示部に表示される場合も保護するものとしました。
2.新たな機能的な要素をアピールするデザインの開発のポイントと意匠制度活用戦術
 特許庁「平成21年度意匠出願動向調査報告書」 より
(1) デザイン開発のコツ〈製品の特徴的な機能をデザインで表現する〉
 消費者のニーズに応えるべく、企業では日々新しい技術を開発し、製品に新しい機能を提供することにより、競合製品との差別化や、製品の付加価値の増大を目指している。
 しかし、優れた新技術であっても、それを消費者に伝わらなければ、競合製品との差別化や製品の付加価値の増大は望めない。
 製品に用いられた新しい技術を効果的に伝えていくためには積極的なコミュニケーションが必要である。
 そのために、メディアの利用など広報活動を通じて機能をアピールする、販売の現場に説明員を置く、説明用の什器をつくる、などの方法が考えられるが、デザインによって製品自体に「新しい機能の存在を感じさせる」ことにより、「機能を眼に訴える」こともその一つの方法である。
 例えば、特殊なスポーツウェアで背中のサポートを強化した機能をもつ部分をあえてわかりやすくデザインする、従来よりも柔らかい特性を持つティシュペーパーを「鼻用」として認識してもらうために、鼻を強調したデザインをパッケージに施すなどの取り組みがある。
一方で、スペックや機能を全面に押し出すと消費者に受け入れられにくい製品では、その効果のみをパンフレットなどでアピールするといった手段も採られている。
 例えば保温効果が高い肌着では、その構造には触れずに、「暖かい」という効果を中心にアピールしている。
 また、監視カメラなど、できるだけその機能を目立たなくするデザインが必要な製品もある。
(2) 意匠制度活用のツボ
 特許権と意匠権による機能的要素の保護技術を法的に保護する場合には、特許権による保護を検討することが一般的である。
 例えば革新的な技術については、特許での保護が望ましい。
 しかし、特許権ではカバーしきれない機能的な特徴は、それが形状に現れている場合には、意匠権での保護も検討すべきである。
 デザインの段階で、できるだけ機能を表現するように努め、意匠権で押さえやすいデザインとしている企業もある。
 出願から登録までの期間や出願費用の面でも、意匠権を利用するメリットがある。
3.実際の活用例
(1) 特許と意匠で同じものを保護しようとする場合
 
【意匠に係る物品の説明】本物品は、主にスポーツをする際などに用いるシャツである。本物品は、別部材を付加したり、編み方を部位によって異ならせることなどにより、部位によって緊締力を異ならせている。したがって、本物品は、スポーツ時等に、着用者の筋肉や関節等のサポートをすることができる。
 
【意匠の説明】実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。「緊締力が強い部分を示す参考背面図」において斜線を施した部分は、緊締力が強い部分である。
(2) 特許と意匠で異なるものを保護しようとする場合
 トーヨーキッチンアンドリビング株式会社
 意匠登録第1303169号 【意匠に係る物品】加熱機器付き流し台
 
【意匠の説明】実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。
 
【要約】
【課題】作業をする際、移動距離が短くて済み、しかも、コーナー部における作業の負担を軽減させることができ、さらに、コーナー部のスペースの有効利用を図ること。
【解決手段】システムキッチンは、架台1と、架台1の上に載置される、コーナーユニット25を含むユニット2と、ユニット2の上に載置されるトップ3との組合せからなり、コーナー角度を略135度に設定した平面視鈍角くの字状のシステムキッチンでる。コーナーユニット25は、ダイニング側から操作可能な引出しユニットにより構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
架台と、該架台の上に載置される、コーナーユニットを含むユニットと、該ユニットの上に載置されるトップとの組合せからなり、コーナー角度を略135度に設定した平面視鈍角くの字状のシステムキッチンであって、前記コーナーユニットをダイニング側から操作可能な引出しユニットにより構成したことを特徴とするシステムキッチン。
(3) 意匠登録によって機能を保護しようとする場合
 @ 日進医療器株式会社
 
【意匠に係る物品】車椅子
【意匠に係る物品の説明】本願意匠に係る車椅子は、フレームの脚部分にクロスバーを配置することにより折り畳み可能な構造とした車椅子である。
【意匠の説明】写真において濃いトーンで表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。
 A 株式会社森修焼
 
【意匠に係る物品】なべぶた
【意匠に係る物品の説明】本願意匠に係る物品はなべぶたであり、頂部における内周側に、円錐形状の突起を設けたものである。
【意匠の説明】写真において、黄色で着色された部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。
【意匠の特徴】〔出願人の記載をそのまま掲載しており、特許庁は内容について審査をしていません。〕(中略)従来のタジン鍋の蓋の内面側の形状は、略円錐形状をなす外面側の形状に沿ったすり鉢状に形成されており、蓋の頂部の内面側は平面状とされている。これに対し、本願意匠は、タジン鍋の蓋の頂部の内面側に、円錐形状の突起を設けたことを特徴とする。この突起は、蒸気が結露して下に落ちるのを促すために設けられたものである。タジン鍋はもともと、食材から上に上がった水蒸気が、蓋の頂部付近で冷やされて結露し、食材に戻る仕組みになっているところ、従来のタジン鍋の蓋の形状では、水蒸気は、蓋の内面側の斜面を伝って下に落ちるため、鍋の中心部よりも周縁部の方に多く戻ってしまうという問題があった。本願意匠における頂部に設けられた突起は、この問題を解決するものであり、鍋の中心部にも水分を滴下させ、食材を全体的にみずみずしく調理する役割を果たすものである。
4.結び
 意匠制度は、あくまで「デザイン」を保護するための制度ではあります。
 しかし、部分意匠制度の創設により、その保護範囲は広がっており、上記のように当初法改正が意図した趣旨とは異なる利用法が見られるのも事実です。
 立体商標制度が、ある意味「意匠的」なものを保護するような利用のされ方をしていることも参考として、これからの知的財産の多角的な保護方法を考えていきます 。
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