HOME > お知らせ

お知らせ

2014-03-11
■ 普通名称などと商標−指定商品、指定役務との関係について−

1.普通名称は商標登録できない?
 商標法第3条第1項は、以下のように定められています。
 自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる。
一 その商品又は役務の普通名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
二 その商品又は役務について慣用されている商標
三 その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、数量、形状(包装の形状を含む。)、価格若しくは生産若しくは使用の方法若しくは時期又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、数量、態様、価格若しくは提供の方法若しくは時期を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標
(以下略)
 普通名称(1号)や慣用商標(2号)、そして商品などの内容を示す記述的商標(3号)は登録を受けることができない、という規定です。
 このような商標が登録を受けることができないのは、自己の業務と他人の業務の区別がつけられない(識別性がない)からであり、また、誰もが使用を望むものであり、特定人に独占させることが不適当である(独占適応性がない)からです。
 しかし、例えば「アップル(APPLE)」は商標登録されています。
 なぜでしょう。
2.「その」商品又は役務……
 上記の条文に「その」商品又は役務、とありますが、これがポイントです。
 商標登録出願に際しては、「登録を受けようとする商標」だけでなく、「指定商品又は役務」を願書に記載しなければなりません。
 役務、とはサービスのことですが、つまり、出願に際しては、どのような商品又はサービスにその商標を使用するのかを示さなければならないのです。
 たとえ商標同士が類似していても、その商標を使用する商品などが似ていなければ、消費者が出所の混同を起こすような不都合が生じないので、登録を受けることができるのです。
 そこで、指定商品を「リンゴ」として、商標「アップル」を出願すると、アップルはリンゴそのものですから、その商標から消費者が出所を特定することができず、また、このような商標が登録されれば、同業者は自分の商品の英語表示をリンゴ箱に付することができなくなってしまいます。
 しかし、指定商品がコンピュータであれば、このような不都合は起こりません。
 条文の「その」とは、商標が使用される商品又は役務、つまり指定商品との関係で「普通名称:であるかどうかを判断する、という意味なのです。
 ちなみに2号の「慣用商標」とは、指定商品「清酒」における「正宗」や、指定役務「宿泊施設の提供」における「観光ホテル」などのように、同業者間に普通に使用されるに至った結果識別力を失った商標をいい、3号の「記述的商標」とは、商品の産地・品質・材料などや、サービスの提供地・質など、商品やサービスの特性を示すものをいいます。
 このような物には、識別性や独占適応性がないので、独占排他権である「商標権」を付与するわけにはいかないのです。
3.造語ならば登録されやすい
 そういう意味で、造語は商標法第3条を理由として、登録を拒絶されることは原則としてありません。
 造語に意味がなければ、「普通名称」「慣用商標」「記述的商標」に該当するはずがないからです。
 SONYやGUCCIには、特定の意味がないですから、指定商品などとの関係は生じないわけです。
 しかし、意味のない造語である以上、品質など評価されてブランドが確立しないと、なかなか「顧客誘引力」を発揮してくれません。
 そこで、略語に近い言葉を造って、商標に使うような場合があります。
 この場合、特に「記述的商標」になってしまわないかどうかが問題になります。
 例えば「マヨドレ」は、「マヨネーズドレッシング」の略だとわかるようにも思いますが、昭和47年に出願され、拒絶理由も通知されずに昭和50年に登録されています。
 特定の意味が生じるとは判断されなかったようです。
4.「かるしお」問題
 ちょっと話がずれるかもしれませんが、以下のような問題が起きているようです。
 7日のスポーツ報知サイトによれば、国立循環器病研究センターとセブン&アイ出版が、小学館が出版した「小学館実用化シリーズ LADY BIRD『かる塩』『かる糖』料理帖」について、販売の中止や謝罪などを要求したとのことです。
 「かるしお」が登録商標であるということでしたので、調べてみると、国立循環器病研究センターとセブン&アイ出版の共有の商標権は、指定商品が「印刷物」で、国立循環器病研究センターが単独で保有する商標権は、指定商品が「肉製品・加工水産物・茶・調味料や加工食品など」で、指定役務が「飲食物の提供」でした。
 これを読んでからネットで小学館の本の表紙を見たところ、表紙に大きく表示されている「『かる塩』『かる糖』料理帖」で「かるしお」と称呼が類似し(「かるえん」とも読めるので、完全同一ではありません)観念も「少量の塩」を生じる部分が二重カギカッコで囲まれているので、「印刷物」について、侵害の可能性があるかもしれない、と感じました。
 ここまでは商標の話ですが、別な報道を読んで、ちょっと違う感想を抱くに至りました。
 医療介護CBニュースによれば、以下の通りです。
 セブン&アイ出版によると、小学館が「『かる塩』『かる糖』料理帖」を発行することを発売前に知り、事前の承諾なく使用することに対して問い合わせたが、「商標的な使い方はしていない」として経緯説明に応じず、同書籍は出版された。
 そのため、国循に相談の上、今回の正式な抗議に踏み切ったという。抗議・要求書では、タイトルの一部に「かる塩」が使用されているだけでなく、本文中に同じ言葉が184か所にわたって出てくると指摘。また、塩分量などの表示がなく、多くのレシピで「塩ひとつまみ」というあいまいな表現になっている点を問題視した。
 国循(国立循環器病研究センター)の「かるしお」レシピは、1食当たり塩分が2グラム未満になる献立で、少量をきっちり量ることができるオリジナルスプーンを付録に付け、厳密な塩分量の管理を重視している。国循では、「『かる塩』という用語の使用方法が一般の方々に誤解を与え、今後の国循の活動の妨げになる恐れがあり、極めて遺憾」とし、今後も商標の無断使用者には厳格な対応を取り、正確な情報提供に努めていくとした。
 事前の問い合わせの際に、そこまできちんと説明したのか、或いはそれより前に、1食につき塩分2グラム未満を「かるしお」と定義する、という何らかの根拠に基いたルールを作り公報したのか、が問題となると思います。
 確かに国立循環器病研究センターとセブン&アイ出版は「国循の美味しい!かるしおレシピ」などを発行し、ベストセラーになっておるようですが、商標権があるからといって、かるしおレシピなるものが、1食2グラム以下である、と定義されたということにはなりません。
5.近畿大学の「大人」なやり方
 近畿大学は昨年6月28日に、「エコ出願」の商標登録を受けましたが、9月13日にインターネットで願書を受け付ける「エコ出願」の名称やロゴを他大学へ無償貸与すると発表しました。
 同大学では、地球環境保護の観点から紙の出願件数を減らそうと、「エコ出願」と名づけたインターネット出願を導入しましたが、このような動きが他大学でも出始め、全国に広まりつつある状況に鑑み、各大学がそれぞれの名称をつけて受験生が混乱することを防ぐためには統一名称があった方がよいと考え、自己の登録商標を無償で貸与することにしたそうです。
 国立循環器病研究センターも、減塩レシピで国民の健康を向上させようとするのであれば、「あるしお」レシピの条件を満たせば、登録商標を無償で貸与する、とした方が目的にかなうのではないでしょうか。
 国立の機関である同センターが、その研究成果である減塩食レシピを、私企業であるセブン&アイ出版と商標権共有することで、かえって国民への浸透の可能性を狭めている、というのは、ちょっと見方が意地悪すぎるでしょうか。
 でも、私立大学である近畿大学が、自分の大学を受けない受験生の利便性まで考えているというのに、国立機関の研究成果が特定の出版社からしか出版できない、というのは、やっぱり腑に落ちないのです。
 余談ですが、「かるしお」を調べていたら、CALCIOという登録商標が見つかりました。
 最近ではわかる方が増えてきたと思いますが、イタリア語で「サッカー」を表す普通名称です。
 ちなみに指定商品は「はき物(運動靴を除く)」など。
 指定商品との関係で、普通名称でも登録を受けられる例が、こんなところで見つかるとは思いませんでした。
朝陽特許事務所 お問い合わせ−特許、実用新案、意匠、商標、著作権、不正競争防止法等、知的財産についてのお問い合わせ。

朝陽特許事務所のご案内

朝陽特許事務所(ちょうよう)−東京都中央区にある特許事務所。

■ 当事務所は、社内に独立した知財部門を設けることが難しい中小企業向けの特許事務所です。

<取扱業務>
・ 特許・実用新案・意匠・商標の出願代理
・ アイディア活用等のご相談
・ 知的財産権の活用コンサルティング
・ 知的財産権等についての講演・セミナー講師

<所在地>
〒104-0045
東京都中央区築地2-15-15
セントラル東銀座703
TEL 03-6278-8405
FAX 03-6278-8406
URL http://www.choyo-pat.jp

 大きな地図で見る