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お知らせ

2014-02-12
■ 肖像権等について(2)−肖像権の権利行使と、物のパブリシティー権について−

1.名誉毀損と肖像権
 名誉毀損(プライバシー権)と肖像権が併せて請求された場合、名誉毀損とされる記事に付された肖像写真について、記事が名誉毀損にならない場合は肖像の掲載についても肖像権侵害にならず、記事が名誉毀損の場合は肖像権侵害になる傾向があります。
 肖像権侵害になるかどうかは、名誉毀損が成立するかどうかにかかっているようです。
2.プライバシー権の位置づけ
(1) 裁判例による区別
 プライバシー権侵害だけを認めた判決と、プライバシー権と名誉毀損、そして肖像権を併せて認めた判決があります。
 プライバシー権については、広義と狭義の用法があり、広義でのプライバシー権の中に肖像権が入る解釈と、プライバシー権と肖像権が同格で並び、これらを人格権で包摂する解釈があります。
(2) 広義でのプライバシー権の中に肖像権が入る解釈
 「肖像権を持つとすれば、プライバシーの権利の一つとして構成することができる」、「人は肖像権を持ち、それは私人が私生活に他から干渉されず、私的なできごとについて、その承諾なしに公表されることから保護される権利であるプライバシーの権利の一種と見ることができよう」との裁判例があります。
 しかし、現行の最高裁判断から判断して、現在はこのような解釈には疑義が生ずるものと思われます。
(3) プライバシー権と肖像権が同格で並び、これらを人格権で包摂する解釈
 大手消費者金融会長の病院内での車椅子姿の写真を週刊誌に掲載したことが、@名誉毀損、A肖像権侵害、Bプライバシー侵害に当たるとして出版社を訴えた事件の判決です。
 判決では、記事の内容は@名誉毀損にはあたらず、記事の文章で会長の入院を指摘したBプライバシー侵害についても違法性はを認めていませんが、「写真」の撮影、頒布は、AB肖像権侵害、プライバシー権侵害である、としています。
 また、元弁護士が、偽造有価証券行使・詐欺未遂事件の容疑で逮捕された際に、警察が逮捕等の事実を広報し、テレビ局が元弁護士の氏名を報道しその映像を放送した事件では、テレビ局に対し名誉毀損、肖像権侵害、プライバシー権侵害が提訴されました。
 過去に別の目的で撮影した原告の映像については違法性はなく、「隠し撮り映像」の放映は肖像権侵害となりました。
 これも、肖像権の侵害が、プライバシーの侵害と結びついて判断されていると思います。
3.肖像を営利目的で利用することについての拒絶権
(1) 有名人と一般人の違い
 有名人の行動を報道することは「公共の利害に関する」場合が多く、「公益目的」に沿う場合も多いです。
 たとえばスポーツや、映画・演劇・コンサートについての報道がそれに当たります。
 これは「社会の正当な関心事」に応えることでもあり、言論の自由、表現の自由の観点からも望ましいことです。
 一方、有名人といえども、個人、自然人であり、一般人よりほどではないにせよ、プライバシー権を持ち、私的な領域の中では、肖像をみだりに撮影されない権利があります。
 有名人には、有名であるからこそ得られる利益もあるのですが、その代償(いわゆる有名税)として、私生活も報道されてしまうことも多いです。
 ただし、有名人の肖像を、本人に無断で商品等に利用したりして利益を得る者に対しては、その肖像を利用された有名人が、利用の拒否権や利益の配分を求めうるとされています。
(2) パブリシティー権
 すなわち、有名人には、顧客吸引力(パブリシティー価値)があるのです。
 パブリシティー権とは、有名人が自分の「顧客吸引力がもたらす経済的利益ないし価値」について持つ排他的財産権です。
 俳優、歌手その他の芸能人、プロスポーツ選手等の職業を選択するということは、もともと自己の氏名や肖像が大衆の前に公開されることを前提としており、人格的利益の保護は大幅に制限されると解されます。
 これらの職業では人気が重視されますから、普通は本人も、自己の氏名や肖像が広く一般大衆に公開されることを希望し、あるいは公開されることを欲しています。したがって、それが公開されたからといって、一般人のように精神的苦痛を感じない場合が多いと考えられます。
 そこで、有名人の場合、自己の氏名や肖像を許可なく使用されたことにより精神的苦痛を被ったことを理由として損害賠償を求めることができるのは、その使用の方法、態様、目的等からみて、自己の評価、名声、印象等を毀損若しくは低下させるような場合や、例えば、自己の氏名や肖像を商品宣伝に利用させないことを信念としているような特段の事情が存する場合に限定されるものというべきです。
 しかしながら、有名人は、人格的利益については一般人ほど保護されない一方で、一般人がその氏名及び肖像について通常有していない利益については保護されているといえます。
 すなわち、有名人の氏名や肖像を商品等の宣伝に利用することにより、その社会的評価、名声、印象等が、その商品等の宣伝・販促効果が著しく向上する場合があります。
 これを有名人の側からみれば、有名になったことによって、自己の氏名や肖像を利用する者から対価を得られるという利益を有しているということです。
 ここでは、氏名や肖像が、人格的利益とは異質の、独立した経済的利益を有することになり、有名人は、その氏名や肖像を許可なく使用されたことによって精神的苦痛を被らない場合でも、上記の経済的利益を侵害されたことを理由として、法的救済を受けられる場合が多いというべきです。
 この利益は、当然に不法行為法(民法709条等)によって保護されるべき利益であり、すなわち損害賠償を請求できるのです。
4.「物」にパブリシティー権はあるか
(1) 有名人については、経済的利益として法的保護を受けられると考えられますが、仮に、「物」が有名である場合に物権的な排他的な利益(権利)を与えることができるでしょうか。
 また、与えることができるとしても、その「物」の所有者がその利益の帰属主体に当然になれるものでしょうか。
 つまり、所有権は法律の明文の規定なしに、パブリシティー権まで拡大解釈できるのでしょうか。
(2) 法律や明文の根拠なしに、特に著名人について認められるパブリシティー権は、プライバシー権や肖像権といった人格権とは別個独立の経済的利益と解されています。
 これは、民法709条(損害賠償)の規定などから一応説得力のある根拠が与えられたと考えられます。
 しかし、人的属性から離れた「物」にパブリシティー権を認めるには、特別法の立法が必要で、当然に認めるには無理があるのではないでしょうか。
(3) 「物」の所有権と知的財産権の棲み分けについては、最高裁判例があり、このルールを変更する必要性も必然性もないと考えられます。
 美術の著作物の原作品は、それ自体は有体物であるが、所有権は有体物をその客体とする権利です。したがって、美術の著作物である原作品に対する所有権は、その有体物である原作品に対するものにとどまり、無体物である美術の著作物の著作権には、所有権の排他的支配は及びません。
 つまり、美術品の所有者だからといって、その美術品のコピー商品を作成し販売する権利があるわけではない、ということです。
(4) 仮に「物」にも「営利的肖像権(パブリシティー権)」を認めるならば、観光ポスターの背景に五重塔が写った場合など、いちいち寺院に許可を取り、料金を支払うなどせねばならず、出版・広告業界(及び発注者)は混乱することでしょう。
(5) したがって、原則として「物」にはパブリシティー権はないと解するべきです。
 ただし、いったん差止めや損害賠償を請求されたり、訴訟を提起されたりしてしまうと、最終的に勝訴するにしても経済的、時間的に負担であり、結論が出るまでプロジェクトが中断する可能性もあるので、実務上は、所有者に対して事前に了解を求めることを怠ってはいけません。
(参考文献:「肖像権」新版・大塚重夫著 太田出版)
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