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お知らせ

2013-10-08
■ 特許権の範囲は文章で決まります−「切り餅事件」の争点とは−

1.裁判では何を争っていたのか。
 
 7月のTOPICSで、越後製菓と佐藤食品工業の「切り餅訴訟」について述べましたが、この際は、特許権の侵害については、「故意」が要件にならないことを中心に論じました。
 では裁判で、侵害が認定されたプロセスはどのようなものだったのでしょうか。
 一言でいうと、越後製菓の特許公報の「特許請求の範囲」に、佐藤食品工業の製造販売する「切り餅」が含まれていたかどうか、が争われていました。
 もう少し正確に言うと、越後製菓の「特許請求の範囲」には何が書かれているかを解釈し、「サトウの切り餅」がその範囲内にあるかないか、ということです。
 その場合、上記の報道された図面の元となったそれぞれの公報の「図面」ではなく、あくまで文章の内容で権利範囲が確定されるのです。
 そして、「侵害」はあくまで「製品」の実体が、その権利範囲に含まれているか否かで判断されます。
2.越後製菓の「特許請求の範囲」の記載。
 特許4111382号の請求項1の記載は以下のとおりです。
焼き網に載置して焼き上げて食する輪郭形状が方形の小片餅体である切餅の載置底面又は平坦上面ではなくこの小片餅体の上側表面部の立直側面である側周表面に、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に長さを有する一若しくは複数の切り込み部又は溝部を設け、この切り込み部又は溝部は、この立直側面に沿う方向を周方向としてこの周方向に一周連続させて角環状とした若しくは前記立直側面である側周表面の対向二側面に形成した切り込み部又は溝部として、焼き上げるに際して前記切り込み部又は溝部の上側が下側に対して持ち上がり、最中やサンドウイッチのように上下の焼板状部の間に膨化した中身がサンドされている状態に膨化変形することで膨化による外部への噴き出しを抑制するように構成したことを特徴とする餅。(太線下線部筆者)
 問題となるのは、「載置底面又は平坦上面ではなく」の解釈です。
 原告である越後製菓は、出願経過を説明し、「本件発明は,切餅の載置底面又は平坦上面に切り込み部を設けても設けなくてもよいことを前提に,特許登録に至っている」と主張しました。
 実は、この特許についての元の出願は、いくつにも分割されている上に、いったんは拒絶査定され、拒絶査定不服審判を経て特許されているのです。 越後製菓は、特許請求の範囲の解釈について、その経過を反映させたものであるべきだと主張したのです。
 切り込み又は溝を設ける「立直側面」を定義するために記載したのである、ということです。
 もう少し噛み砕いて言うと、「立直側面」とは、「載置底面」でも「平坦上面」でもない、「側面」ですよ、という意味で記載した、ということです。
 これに対し、佐藤食品工業は、この記載は「載置底面又は平坦上面」には切り込み部等を設けず、「上側表面部の立直側面である側周表面」に切り込み部等を設けることを意味するものと解釈すべきである、と主張しました。
3.裁判所の判断
(1) 東京地裁
 東京地裁は、本件発明は請求項と明細書の記載事項を総合すれば、「切り込みの設定によって焼き途中での膨化による噴き出しを制御できると共に,焼いた後の焼き餅の美感も損なわず実用化できるようにすること」などが目的であり、切餅の切り込み部等の設定部位を、従来考えられていた餅の平坦上面(平坦頂面)ではなく、「上側表面部の立直側面である側周表面に周方向に形成」する構成を採用したことにより、その目的を達成できるようにしたものなので、「載置底面又は平坦上面ではなく」との文言は、切餅の「載置底面又は平坦上面」には切り込み部等を設けず、「上側表面部の立直側面である側周表面」に切り込み部等を設けることを意味するものと解するのが相当である」と判断しました。
 つまり、被告である佐藤食品工業が1審では勝訴となったのです。
(2) 知財高裁・最高裁
 しかし、知財高裁は、「側周表面に切り込み部等を設け、更に、載置底面又は平坦上面に切り込み部等を形成すると、上記作用効果が生じないなどとの説明がされた部分はなく、本件明細書の記載及び図面を考慮しても、『載置底面又は平坦上面ではなく』との記載は、載置状態との関係を示すため、『側周表面』を、より明確にする趣旨で付加された記載と理解することができ、載置底面又は平坦上面に切り込み部等を設けることを排除する趣旨を読み取ることはできない」と判断しました。
 そして、上告審においても、最高裁第2小法廷は、佐藤食品工業の上告を退ける決定をくだし、これにより越後製菓の勝訴が確定しました。
4.出願に際しての留意点。
 特許法における「発明」の定義は、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう」と定められています。
 出願に際しては、この「思想」という抽象的なものを、「文章」で表さなければなりません。
 特許請求の範囲の請求項の記載だけでなく、明細書の記載においても、発明の外縁について、誤解を受けないように記載しなければなりません。
 今回の場合、越後製菓側は、誤解を受けないために正確に記載しようとして協調した部分が、かえって発明の範囲を狭めるように解釈されかねないことになりました。
 一つ気をつけたいのは、やはり「○○でなく」というような記載をする場合には、それがどこにかかるのかを明確にしておかなければならないということです。
 さらに言えば、「○○でなく」を使わなくて済むならば、極力使わないようにした方がよいということです。
 朝陽特許事務所では、出願の代理だけでなく、自前で出願する場合の出願書類の書き方についてのご相談も承っております。
 特許請求の範囲について、いかにしてなるべく広い範囲での権利取得を目指すか、また、明細書の記載が、請求項の記載をきちんとサポートしているか、などについて、丁寧にご指導いたします。
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